ＡＣＴ.４９ 脱出／閃迅組
数十分後
「オラァっ！！」
『ピグブフッッ！！！』
ザザシュッ！！！
『パギィィィッッッ・・・・・・！！』
豚の様相の魔物が炎と斬撃によってバラバラに砕かれる。
「へっ。俺にかかればこんなモンだぜ。」
「やっぱり、キッド様すごーい！」
（ここぞとばかりに・・・・・・）
「・・・・・・魔物相手にウサ晴らしとは・・・バカと言うよりは不憫な奴だな・・・」
「・・・そうだな・・・僕も見てて、少し哀しくなった。」
確かに不憫だ。
「な、何でッスか！？」
「・・・やっぱ、アンタさ・・・主人公になれないタイプみたいね。」
（な・・・なんだよ、主人公って・・・）
お前のことだよ。
「しかし・・・前よりも剣閃が速くなっているのは確かみたいだな。
実戦修行は１日しかやってないが・・・よくやっていると思う。」
「こんぐらいの底力はあるッスよ。」
「・・・・・・さっきのは底力・・・つまり、勝利は偶然の産物であって、
つまりその偶発的要素を取り除いた力、つまりそれが実力であって、
お前のソレはかなり低く見積もっても良いという訳だな？」
「墓穴の底で墓穴掘った感じ。ダッサ・・・」
「んだと、コラァ！人の揚げ足取ってんじゃねーよ、キザヤロウ！バカリノン！」
（キッド君・・・そこで挑発に乗るから、からかわれるんですわ。）
『いやはや・・・こんなにゆっくりと物見遊山しているとは思いませんでしたよ。』
「――――――！」
ザッ！
「騎兵隊・・・？」
キッドやリノンはまだ見た事がなかった。
容姿は明らかに自分たちと同年代―――
「・・・ラゥム派の方のな。つまり、敵だ。」
まだ、相手は構えない。
『・・・初めまして・・・ですね。そこのお２人とメノウさん以外は。
騎兵隊第二大隊第一中隊隊長・・・シン・ヤマザキです。以後お見知りおきを。』
シンの後ろに４人ほどの気配がある。
「なっ・・・俺らとタメかってのに・・・中隊の隊長・・・！？」
ロックハートと同じく年少者での入隊・・・
つまり、かなりの実力を持っている事は言うまでも無い事は分かっている。
だが、そこまでの地位にいることだけは予想外だった。
「ソーライト軍の頃には既に小隊の隊長だった。」
「な・・・」
「ロ・・・じゃないや、知ってるの？この人の事・・・」
『別に名前を呼んじゃって構いませんよ？
こっちは既に一度手合わせして、正体は分かっている訳だし。』
（・・・正体は重要では無い、のか、なんなのか―――）
コーデリアを追ってきたのは分かるが、
ここでロックハートに関して必要な追求をし無い事にソウジは疑念を抱く。
「・・・・・・俺と同じく、最年少隊士だ。」
（・・・流石といった所かな・・・
ソーライトは対魔族の戦術スキルが非常に高い。
デーモンバスター隊でなくとも他国の兵よりは屈強―――・・・
その生き残りの２人と言う訳か・・・
もっともロックハートがソーライト人かどうかはまだ不明だが・・・）
チャキッ・・・
『さて・・・・・・』
「な・・・何だ、オメー・・・話し終わったら早速、殺る気か？」
『えぇ・・・どう見ても、姫様はお元気そうですし』
「げ・・・元気じゃないよ！凄くしんどいよ！ゴホゴホ。」
『アハハ・・・お噂通り、明るくて楽しい方です・・・ね。』
ギンッッッ ！ ！ ！
「「―――――――――ッ！！」」
凄まじい殺気―――！
目を一瞬見開いた時に放出されたそれは、キッド達を縛り付ける。
『まぁ・・・・・・姫様だからと言って、余り僕を嘗めた事はしない方が懸命ですよ。
とは言え、ハイティーンじゃ最強クラスの２人が居る上に、
「伝説の剣士サン」や「剣豪スネイクの息子サン」が居る状況ではどうにもね。』
（・・・伝説の剣士・・・？）
「だったら、何だって言うんだコラ。大体、オヤジの名前を出してくるんじゃねぇよ。」
『あ・・・・・・癇に障りましたか？鷹から生まれた鳶さん？』
「――――――ァッ！！」
キッドが一気に走り込む。
「テメェッ！！」
「バカ、キッド！！」
「アホが！迂闊にその男の間合いに」
ガキィィィ ンッッッ！！！！！！
「――――――！？」
『押しは弱いが・・・素質は素晴らしい・・・見事な剣閃だ。』
『やぁ、ありがとう。カイ。』
巨躯の男がキッドの刃をハンマーで受け止めている。
「なっ・・・（何だこの野郎・・・いつの間に入り込んできやがった・・・！？）」
『それじゃ、みんな出て来ていいよ。』
ザッ・・・・・・ んっ！
「他に３人・・・！」
『へへっ。ラクショーそうな奴らじゃん？』
背の低い見た目がコーデリアと同じぐらいの少年。
『チュージ。その様な油断は敗北を招く故、控えよ。』
先のキッドの一撃を止めた巨躯の男。
『・・・カイの言う事は確かだけど・・・大した事はなさそうって感じ。
（ホントにこんなんでこの先やってけるのか不安ね・・・）』
何となくやる気なさげな少女。
『・・・・・・・・・殺生有るのみ。強さは関係ない。』
フードを被った黒尽くめの男・・・顔が見えない。
だが、魔力の質がかなり精錬されている―――
「こいつら・・・・・・一体・・・・・・」
『彼らを知る者はそう居ませんよ・・・申し遅れました。
僕らは騎兵隊第二大隊所属特殊部隊・・・「閃迅組（せんじんぐみ）」です。
以後お見知りおきを。』