ACT.50 脱出/秒殺
「閃迅組・・・なるほど、そういう訳ですの?」
『えぇ・・・僕らは最近、また編成された新生の閃迅組です。
しかし、流石はメノウさん・・・色々とご存知ですねぇ。』
「・・・これでも元は貴方の知っている姿でしたから。」
『フフ・・・』
ワザとらしい笑顔にワザとらしい笑い・・・
反面、先ほど見せた強烈な殺気・・・
その異様とも言える融合がシンの隠された部分を分からなくさせる。
それ以上にリノンはメノウの正体が気になる。
「・・・チッ・・・寄りによって戦闘可能な人数が少ない時に・・・」
「・・・メノウさんは姫の傍に。リノンさん、悪いですが少し戦ってもらいますよ。」
「(・・・・・・。)はい。大丈夫です。」
ザッ・・・
「リノン・・・ヤバくなったら直ぐに俺を呼べよ。」
「呼んだらどーしてくれるの?」
「バーカ、ちゃんと守ってやるに決まってんだろーが。」
あの日、眼の前で友人達が死んで言った姿を見せる訳にも
彼女自身をそんな姿にする訳にもいかない。
「・・・・・・期待してないけど、危なくなったらね。」
普通ならば、それを愛情として受け取れるが
リノンも、キッドも強情すぎて素直には出来ない。
『うーん・・・・・・』
『隊長・・・フェアじゃないですな。』
『だよねぇ。捕らえると言っても、正々堂々とやらないとね。
何せキッド君は真正面から何も恐れずに向かって来たんだから。
それに対しては敬意を表さなければならないし。何より、僕自身が卑怯な手は嫌いだ。』
『ム。ならば、この場は我々が相手をし、最後にあなたが戦えば宜しかろう。』
『アタシはそれで賛成だねー。任務遂行出来りゃ、いーんだし。』
『俺もそれでオッケー。ヘーハンもちゃんと真面目にやれよー?』
『・・・・・・・・・。』
反応は無いが頷いている。
どうやら閃迅組の思考は似通っているらしい。
「(・・・完全に嘗めているな・・・)・・・俺は薙刀の女を殺る。」
「お前の足ならあのリーチでも間合いを詰められるだろう。
僕はあのハンマーの男を。キッド、お前はあの小さい奴だ。
リノンさんは黒装束の男を・・・魔力からして恐らく魔術士だ。」
「「了解。」ッス。」
それぞれ広がり、向かい合う・・・
『へぇえー・・・』
「・・・?」
『一国のお姫様(クリスティーナ)と色々噂が立ってた理由が分かるわね。』
ザリ・・・・・・ッ
「・・・・・・・・・」
『無愛想なんだ・・・ま・・・いーや。』
軽い挑発―――というよりジョークか。 そんな事はどうでもいい。
ロックハートはシンが表れた時点で既に戦闘思考以外のものは消えている。
『アタシはユリ・イーチ。こう見えて副長だから。』
「・・・大した女だな。」
『国際指名手配されてる身だから、ハナッから殺』
「・・・ほう・・・」
『―――――――――!』
振り返る・・・が、既に後ろに姿はない。
「・・・悪いがな、女・・・・・・俺は誰にも殺されん。
俺の相手はお前達のリーダーだ。邪魔だ。眠っていろ。」
『―――!(至近距離で魔法弾を・・・!?)』
ドギャ ガッッッ!!!!
『アアァッッッ!!!(こんなレベルの魔力を一瞬で・・・!?)』
吹き飛んだ女・・・ユリを空中で掴む。
「やはり、ガードはしたようだな。」
『なっ・・・!?衝撃波のスピードについて・・・!?』
胸倉を掴み、着地と同時に背負い投げ、落とす。
『がはっっ!!』
ド・・・ッ!
「・・・悪いな。やはり女に手を出すのは気が引けるが・・・致し方ない。」
『――――――う・・・・・・・・・』
「背負い投げに加えて鳩尾を強めに殴っただけだ。
数時間もすれば歩ける程度にはなるだろう。」
(す・・・げぇ・・・・・・・・・やっぱり・・・コイツ・・・)
(ものの十数秒で・・・)
「来い。俺の相手は貴様だ。貴様が俺を捕らえると言うのなら逆も然り。
尽忠報国の志を捨てた貴様には、死を以って下に叩き堕としてやる。」
『フフ・・・ホント嫌な人だなァ・・・まぁ、少し待ちましょうよ。
他の3つの戦いが残ってるんですから・・・』
「・・・・・・・・・。」
『・・・吾輩はカイ・バイス。戦う前に名をお聞きしたい。』
「・・・ソウジ・イムラ。神刀流免許皆伝だ。
武士道に通ずるその名乗り、見事なものだが・・・倒させてもらうよ。」
『ム。お主とは素晴らしき戦いが出来そうだ。』
「・・・生憎、楽しむつもりは・・・ない!」