ACT.53 脱出/具現魔法


「・・・・・・・・・」

『・・・臆した・・・か?無理も無い・・・が・・・殺す。』

火球が襲い来る。

「(水魔法、詠唱省略!)チェレステ!」


ジュバッッ!!


『ククッ・・・・・・ただの女学生にしては尋常ではないな・・・
 ・・・気になるな・・・・・・見え隠れする驚異的な力が・・・』

(何言ってんの・・・?コイツ・・・私が魔力出してるのは、
 敵の魔力に干渉してこの場の大気魔力のイニシアチブを私に移す為なのに・・・
 大体、そんなに大きな力なんて・・・)

『・・・この私を・・・威圧するその魔力・・・・・・欲しいな・・・』

「へ・・・・・・?」

漆黒のローブから深赤色の右手が現れる。

「・・・?あの変な手・・・・・・なに・・・?」

『・・・その魔力・・・そんな小さな器には勿体無さ過ぎる・・・
 その魔力は・・・この“曉の手”を駆るヘーハン・カウィに相応しい!!!』

「ちょ・・・ちょっと待ってよ・・・!私、そんな魔力知らないって!」

『ならば・・・丁度いい・・・自分では分からない方が悔しがらずに済むものだからな!』


ドンッッ!!


「リノンさん!来ますわ!(まさか・・・あの手は・・・)」

メノウは心当たりがあるが、言っている場合では無い。
しかし、気になる。なぜ、それを持つ者が閃迅組に与しているのか。

『何、ちょっとした精神ダメージのみ!殺してしまうと奪えぬからなァ!!』

「・・・ったく・・・どーしてこう、敵方の男ってのは性格悪いのが多いのよ!
 無属性・・・具現化魔法!!」

白い光がリノンの周りを舞い始める。

『その魔力!!頂く!!』

「私をただの学生だと思って嘗めない方がいいわよ!詠唱省略っ、“ファルコ”!!」


半透明の鷹が舞い降り、
ローブの男に向かい地面ギリギリから一気に襲い掛かる―――


『カ・・・ハあっ!!』

ぼたッッ!!!

『具現魔法を詠唱省略で発動とは・・・!!ますます、魔力を頂きたくなった!!』

「―――――――――まだ!!!」

(具現魔法は魔法を何らかの生物に模し、
 その生物の特性を生かすのが一番分かりやすい特徴・・・
 それの詠唱は必須なのに、完全な形で作り出すなんて・・・
 リノンさん・・・あなたには私以上の才気がありますわ。)

「そのまま吹き飛ばし・・・・・・・・・?!」

ファルコを構成する魔力が徐々に消える―――

『カハハアアアッッ!魔力・・・食事中だァ!』

紅い右手に向かってファルコの魔力が急激に吸い込まれていく。

「ちょ・・・マジで食べてるの!?」

『この“曉の手”は魔力を喰らう腕!さぁ、もっと魔力を!』

「・・・だったら・・・!」


グォッッ!!


『―――!?バカか・・・!?今更この鷹に魔力を与えた所で!』

翼が更に強大に、身体も強靭になり大きく変化する。

(重力系を除く魔法と具現魔法の絶対的な相違点・・・
 ・・・具現魔法はその具現化された姿の大きさに比例した・・・
 それも無属性もしくは土属性の時に最も強大な質量を持つ。
 特性もよく理解していますわね・・・)

『ゲェ・・・・・・ッ!!・・・!!(重い・・・ッ!!)』

「潰しなさいッ!!」



ドォ・・・・・・ンンンッッッ!!!



「凄いですわ!
 (・・・・・・しっかり教えればもっと成長する・・・!)」

『グホッ・・・・・・ッ・・・』

「(殆ど無傷っぽいし・・・最悪・・・)
 こうなったら、私の奥の手」

『あー、タイムタイム。彼の負けだよ。』

シンが割って入る・・・

『・・・チッ・・・・・・』

『・・・ヘーハン・・・?後で覚えておいてね・・・?』

『・・・・・・・・・。』

(やはり何かあるのですね・・・・・・・・・)


ザッ・・・


『いやはや・・・今日の彼らは最低限の武装しかしてないとは言っても・・・
 こんなにストレートで負けちゃうとはね・・・参っちゃうなァ・・・』

「・・・よく言う・・・・・・全員、ほぼ無傷で通しているだろうが・・・
 俺がやった女も最終的には受身でダメージを軽減しているしな・・・
 俺達の力押しの勝利・・・だろう・・・?」

「嘗めてんのって、そっちだろーが。」

『んー・・・少なくとも、カイは真剣勝負だったけどね。』

『・・・仰る通り。』

『・・・さてと・・・・・・僕自らやるとしますか。』