ACT.54 脱出/両断


『・・・さ・・・どっちが来ますか?』

「・・・・・・そうだな・・・」

「・・・僕は譲ってもいいけどね・・・」

「って、ちょっと待てぇ!!“どっち”って事は、
 俺は“アウト・オブ・眼中”って事か!?あぁ!?」

(そーなんじゃないの?)

(ヒドイ・・・)

(キッド様強いけど、ソウジ様>>ロックハート様>>>>>>キッド様 だョ。)

(姫が一番酷い・・・)


ザッ・・・


『あなたは確かに強いんですけど・・・ちょっと僕の事を嘗めてませんか?』

「嘗めてた4人はやられてんだろーが。ボケ。」

『困るなァ・・・こっちはロックハートさんと同じで
 最年少隊士を張ってた程度の腕はあるんですよ・・・
 君みたいな、平和ボケな・・・』

消える・・・!

「――――――ッハ!!こんぐらい!」


ガキッッンッッ!!!


『・・・よく止めましたね・・・動体視力はいい様ですが・・・』

「―――――――――!!!!」


バキ・・・・・・・・・           ンッッ!!


「「「なっ・・・・・・!」」」

銀色の鋭いモノが宙を舞い、

「俺の・・・刀が・・・」


ドスッ!


「そんな・・・・・・っ・・・・・・」

大地に垂直に突き刺さる。

『・・・そんな鈍ら刀じゃ・・・
 僕の大業物“菊姫”には敵いませんよ。そうですね・・・
 相手を出来るのは、ロックハートさんの“蒼星”か、
 ソウジさんの“劉奏牙”・・・若しくは・・・・・・』

「・・・先ほどから私の事ばかり何か言おうとしているようですけど・・・」

『・・・さっさと、力を見せちゃった方がいいんじゃないですかね。
 でなきゃ、昔みたいに後悔しちゃいますよ・・・?』

僅かにメノウの魔力が猛る。

「・・・メノウさん、挑発に乗る事は無い。
 キッドも下がれ・・・小太刀しか無い以上、残念だがお前には何も出来ない。」


ザッ・・・


「斬り合いを愉しみたいのなら・・・僕が存分にそうしてやるぞ。」

『・・・止めにします。ダンスにフラれて、やる気なんて起きませんよ。』

先に4人が消える。

『・・・キッドさん・・・あなたの読みのセンス・・・
 いえ、それ以上の能力である空間把握のレベルは高いです。
 でも、僕に相手にされたいのなら、そんな訳の分からない魔力に頼るよりも先ず、』


ギンッッ・・・!!


「――――――ッ!(何て眼だ・・・―――)」

『・・・自分の身の程を知って、敵うかどうかを考えるべきですね。』


ふ・・・・・・ッ・・・


「く・・・・・・(あの野郎・・・・・・!)」

「うわ・・・ホントに真っ二つっていうか・・・」

折れた刀身を鞘に納め、右手に残っている方も納める。

「・・・ヒビも生まずに・・・か。キッド、奴の言う通り」

「分かってるっスよ・・・レベルが違うのはあの踏み込みの段階で分かったから・・・」

(・・・抜刀術の初動作で分かっているのなら、マシだな。)



「・・・くそ・・・・・・親父の刀・・・・・・壊しちまった・・・・・・」

ギリ・・・ッ

「・・・次に会ったら、今度は俺が・・・!」








ユーリケイル共和国 ユーリケイル城

「父上。この所、天真忍軍の方がよく見えていると聞くのですが・・・」

「おお、ヴィンセントか。お前には言っておくべきだな。」

「・・・何か・・・あったのですか?」

パサッ。

「詳しくはこれを読めばいい。
 簡単に言えば・・・ローテルダムのコーデリア様が命を狙われている。」

「コーデリア姫が・・・!?一体誰に・・・過激派なんて、あの国には・・・」

「・・・・・・ラゥム新国王とその一派にだ・・・」

「!(そうか・・・確かにあれは公的な・・・)」

「・・・そしてもう1つ。未確認だが・・・」


風が吹き・・・木の葉の音で遮られる・・・



そうして、彼らはこの国に足を踏み入れる。


「着いた・・・」

「車(馬車)に乗せてもらったから、速かったね。」

ガイアでは機械産業も多少にある。
基本的に魔力を用いたものであるが、
魔物が魔力を好む為に移動手段への使用は禁止されている。

「謁見は明日になるから、今日は休むとしよう。」

「宿・・・取ってるんですか?」

「いや、ここには僕の親戚が居てね。こっちだよ。」

「うッス。」

(ちょっとワクワクだョ。)


ザァ・・・・・・ッ・・・


「・・・・・・・・・」

「あれ?ロックハート君・・・?どうしたの・・・?」

「・・・あれだけ荒れ果てた町が・・・
 僅か2年半で元通り以上になるとはな・・・・・・時間の流れは恐ろしいな・・・」

「・・・・・・?」