ACT.56 中心


深夜 ユーリケイル共和国 城下町 ミサト邸

「メノウちゃん、アンタも久しぶりだね。」

「御元気そうで何よりです。」

「・・・ずっとソウジの隣にいてくれたそうじゃないか。もう3年かい?」

メノウは慣れたが、やはり年相応の顔には見えない。

「・・・えぇ・・・来月で・・・そうですね。」


ざぁ・・・ッ。


「ふぅ・・・・・・それにしても・・・
 アタシが教えを説いた弟子はことごとく、不幸になるねぇ・・・
 娘夫婦も・・・カエデも・・・あの『大バカ弟子』も・・・メノウちゃんもねぇ。」

「そんな・・・決して、先生が悪い訳では・・・それに私は全然」

「・・・そう言わせてくれないかい?」

「・・・先生・・・・・・」

少しの沈黙――――――

「・・・・・・2年前・・・カエデの葬儀の後・・・アンタに頼んだコトがあったね。
 ソウジを想ってくれているのなら、あのコの中心になってやって欲しい・・・と。」

「・・・すみません・・・結局、彼は・・・」

追い続けている・・・何より自分が彼と共に・・・

「何を言ってるの。あの子が復讐の剣を取ることは眼に見えていた・・・
 けれど、アンタがいるからちゃんと戻って来ようとする意思はある。
 だから、今もあの子は無事・・・とは言えないけれど、ちゃんと生きているだろう?」

「・・・・・・・・・はい」

「・・・あんたにも教えただろう?復讐も1つの正義・・・と。
 人間は人間である以上、その感情に身を委ねなければならない時がある・・・
 ただ、1つだけやっちゃならないのは、殺すことを愉しむ為に真剣を交える事・・・だと。」

「ええ。」

今まで何度もミサトから聞いた言葉である。

「・・・あの子は一度でも、殺し合いを、斬り合う事を愉しんでいたかい?」

「・・・いえ。いつも真剣そのものですわ。楽しむのはあくまで“剣術”として。」

「・・・だったらいいじゃないか。中心があるのなら、飛んで行きはしない。
 ただ、その円が大きくなるか小さくなるかはあの子の気持ち次第さね。
 あの子の話はこのぐらいでいいだろう?」

「・・・ええ・・・彼の事・・・ですね。」


サァ・・・・・・・・・


「・・・あの銀髪のボウヤ・・・国際指名手配をされている、
 ロックハート・クラウンってボウヤじゃないのかい?」

「・・・ええ。」

「・・・ロックハート・・・・・・なるほど、ねぇ・・・」

「・・・・・・?(・・・彼の事、調べてみる必要がありそうですわね。)」




同刻
「ソウジ様、どこー?メノウお姉ちゃんもいないしー。」

「お、俺に聞かれても・・・」

「・・・彼女は庭だ・・・イムラは」

「ここにはイムラが2人いるけど?」

「さっさと、ソウジさんって言えよ。」

ツッコミが多いな。ホントに。

「・・・ソウジは外に出ている。」

「先輩を呼び捨てにすんなよ。年上だろ?あの人今年で18だし。」

「・・・・・・実力は変わらん。さん付けして、妙な上下関係は作りたくない。」

(なーにが、妙な上下関係で実力伯仲だよ・・・先輩、嘗めんなよ。)

(アンタ、それって微妙に『虎の威を借る狐』だよ・・・)

(キッド様、最近カッコ悪ーい。)

(・・・・・・お前ら・・・ホントにひどいな・・・結構ヘコむぜ、それ・・・)

だが、キッドの軽口が招いているのは確かだ。

「・・・・・・少し、俺も外に出るぞ。姫の事を頼む。」

「オメーに頼まれなくても大丈夫だっての。」







「・・・・・・姉さん・・・」

小さな墓石・・・墓標には姉の名。

「・・・僕を・・・愚かだと思ってるのかな・・・実際そうだけれど・・・」