ACT.57 再会/埋葬されし者達


「・・・姉さんは優しいから、今僕がやろうとしている事、
 追い続けている事を・・・快く思っていないだろうね・・・」

返事は・・・もちろんない。
だが、相槌は聞こえる気がする。
カエデ・イムラは人の話を最後まで黙って聞く人だった。

「・・・それでも・・・姉さんは僕にとって絶対の存在だったから、
 僕自身が剣の道を歩む上でも・・・どうしても決着を付けたいんだ。
 それに・・・僕や姉さんの様な存在を生み出さない為にも・・・」

雨粒が僅かに落ちる。

「・・・次に来る時は多分・・・純粋に強さを求めて剣を振るっていると思うから。
 安心してくれ・・・なんて今更、言えないけれど、安心してて・・・また来るよ。」

ポタ・・・。

「・・・雨か・・・・・・
 ん・・・?・・・あれは・・・・・・」

30mほど向こうに銀髪の髪の少年が立っている。

「(銀髪だがあの容姿・・・)ロックハート・・・・・・?」









「・・・・・・2度と来るつもりは・・・いや・・・」

変装道具を全て取り払い、いつもの緑髪に戻る。

「・・・この場所に来る権利など、なかったのにな・・・」


ギリッ・・・


「・・・・・・お前は3年前のあの日、言った・・・
 俺の足枷になるのなら忘れてくれ・・・と。だが・・・実際はその逆だ。
 忘れる事など出来はしなかったし、足枷ではなく、
 お前は俺にとって生きる為の言葉では言い表せない何かを与えてくれた。
 だが・・・その何かの代償がお前の命だから・・・俺はここに来る権利など無い。
 ・・・今一番大切な人も見つけられないのだから・・・
 なのに・・・・・・戻ってきた・・・」


ザァァ・・・     ァアアア・・・・・・・・・


「・・・・・・アリス・・・・・・俺は矛盾しているのだろうか・・・」










同刻 東大陸中西部 平原

「何や雲行き、怪しぃなってきたなぁ。」

「ホントですね・・・こちらは雨が多いと聞きましたが・・・」

黒服・黒髪の少年と、身なりのいい銀髪の少女・・・

「加えてどー言う状況やねん・・・アレは・・・」

「よく分からないけど・・・多分、二中隊ぐらいの規模ですね・・・
 魔物の哨戒任務でもなさそうですし・・・」

「そーみたいやな・・・ん。ちょーどエエ時に来てくれたな。」


タンッ。


「お話は聞いています。これまでの道中、ご無事で何より。」

その二人の背後に別の男が現れた。
服装、装備しているものから少年も男も同じ忍軍の者である。

「なーんもあらへんかったからな。確かアンタ、ローテルダムに出向しとったよな?」

「ええ。あなたの質問は分かっています。
 前方の部隊はローテルダム第二大隊の者達・・・何やら陣を置く場所を探している様で。」

「・・・・・・陣やと・・・?」

そう言いながら部隊の方を気にする。

「もしかして・・・・・・・・・戦争・・・ですか?」

「・・・そうとしか考えられぬのですが・・・どこを相手になのかまでは・・・」

「・・・せやな。城下町の近く(10km圏内)で張ろうとしとるだけやから、
 どこが相手なのかまでは分からんけど・・・面倒ゴトなんは確かやで。」

第二大隊を睨みつける―――

「・・・・・・どうなされますか?」

「・・・あんま、派手に索敵せーへん方がええかもな・・・殺されてまうわ。
 どーせ、リカードもそないゆーとんねんやろ?」

「ええ。暫く、この近辺に身を潜める事にしています。」

「俺ら2人もそないせなしゃーないな。宿は取ってくれてんねんやろ?」

「ええ。それはもう。しかし・・・」

「あ、私の事は気にしないで下さい。ご迷惑をかけているのは私ですし」

「いえ・・・そう言う事ではなく・・・」

まぁ、言わんとしている事は分からなくは無い。

「何で俺をそー言う目で見とんねん。
 ってか、別室に決まってるやろ!この人の近衛に殺されたくないわ、アホ。」

「くすっ。」

「ほら、あんたも笑ってへんでさっさと入るで。」

「あ、はーい。」

「それでは、また状況が分かり次第。」

「ああ、頼むわ。
 こっちはこの“ブラッド・クィテッド”に任しとき。」