ACT.58 再会/異血の繋がり
翌日 ユーリケイル城
「話とお主方の事は全て聞いている。」
ユーリケイル共和国現国王ライト・ウィルスタイン。
3年前の紛争後に就任し、情勢の安定に努めた結果、
わずかな期間で戦前近くまで復興させるほどの手腕は世界でも評価が高い。
「あの・・・お力を・・・貸して頂けますか?その・・・」
「ヴィンセントとの事は気にせんでもよかろう。
あれは私とそなたの父君との下らない約束だったのだから。
あなたはあなたの思う方と共に歩けば良い。お・・・話が逸れたな。」
よく話が逸れる事でも一部で有名だ。
「・・・先代が築き上げてきた和を乱そうとするラゥムの暴挙は我々も許せぬ。
このライト・ウィルスタイン。コーデリア・ウィル・ローテルダム様の為に
全てを惜しみなく尽くしましょう。」
「あ・・・ありがとうございます・・・っ!」
「細かい件は僕らがお話します。キッド、リノンさん。姫を頼むよ。」
「うッス。
(つーか、あのバカヤロウ・・・どこ行ったんだよ・・・)」
(城に入りたがらなかったし・・・大丈夫だと思うんだけどなァ・・・)
バタン・・・
「・・・ミサト先生のお孫様・・・でしたな?」
「・・・ソウジ・イムラと申します。」
「君も神刀流を?」
「はい。未熟ながら、免許皆伝を頂いています。」
国王も相応に納めていると聞いている。
「ほう・・・・・・それは並々ならぬ努力の結果かな。
そちらの・・・お嬢さんは確か・・・」
「メノウ・クルストと申します。今回は姫の身の回りのお世話をさせて頂いています。」
「(・・・なるほど、クライセント君の判断は正しいな。)
して・・・文書の中に1つ危惧している事があるとかいてあったが・・・
どう言う事か、具体的に聞かせて頂けるか?」
2人が促されて席に付く。
「・・・第二大隊及び第三大隊が先日の城下町襲撃事件の黒幕として
ユーリケイルに報復と称し侵攻してくるという可能性です。」
「・・・・・・確か、その二大隊はラゥム国王の一派だったな。」
頷く。
「城下常備の1と4などは国王派です・・・
しかし、現状を考える限り・・・言いなりになるのは目に見えています。」
「・・・ふむ・・・確かにそうだろう。つまり、彼らが攻めてくる前に軍備を整えよう。」
「はい。私達もこの国の被害を最小限に抑えたいのです。」
「そして、出来れば国家間の戦闘は避けたい・・・
だからこそ、国王にご尽力頂き、姫様からもう一度お言葉を申し頂き、
国民に何が正しく、何が間違っているのかを明確にしたい・・・そう考えています。」
「・・・・・・なるほど・・・」
・・・・・・
「話は分かった。だが、2つほど聞きたい事がある。
1つは簡単な事・・・そなた達2人の率直な意見を聞きたい。」
「・・・何でしょうか。」
「・・・・・・ラゥムを殺すおつもりだな?」
余りにストレートだったので驚いた・・・
「無論。あの男は葬らねば、更なる被害が拡大するのは明白・・・ですが、
現状でその判断を下すのは非常に危険と存じています。」
「・・・分かった。だが・・・・・・其の決意を聞いたとしても、
協力する意思はあったとしてもこればかりは聞かねば、兵を出す事は出来ぬ。
・・・・・・そなた達なら知っているのだろう・・・?
この世界で一体何が起こっているのか・・・起ころうとしているのかを。」
勘もいい。
いや、この数年で各国で様々な紛争が唐突に起きている。
分かって当然といえば当然かもしれない。
「・・・聞かせてはくれないか?この国の諜報機関を以ってしても分からんのだよ。
いや・・・東大陸及び南方諸島連合の調査部でしても・・・
半年前の同盟国ソーライト事件から始まったこの一連の事件・・・
・・・むしろ・・・3年前のこのユーリケイル紛争から・・・
そして、その中心に深く関わっているであろう私の息子の事を。」
「「息子・・・・・・!?」」
同刻 王子の部屋
「・・・よし準備出来たし、早くコーデリア姫に挨拶に行かないと。」
ゴッッ・・・・・・!!
「え・・・・・・?」
物凄い風でバルコニーの扉が開く―――
「・・・・・・・・・」
「あ・・・・・・・・・」
「・・・・・・元気そうだな・・・
もう2年半になるか?ヴィンセント。」
「・・・どうして・・・ここに・・・?」
「・・・お前のお父上から聞いているだろう?少しぐらいは・・・」
「・・・うん・・・・・・でも・・・一体、何をしていたのさ・・・!
・・・ロックハート・・・兄ちゃん・・・」