ACT.59 再会/兄弟
「息子・・・とは、ヴィンセント王子の事では」
「違う。もう1人おるのだ。2年半前に負う必要の無い責を背負い、
この国から去っていったもう1人の息子が。
いや・・・・・・正確には兄の息子・・・と言うべきか・・・」
「・・・ソーライトでデーモンバスターとして戦っていた。」
「デーモンバスター・・・・・・じゃあ・・・やっぱり・・・」
「・・・・・・言わんでも分かるようだな・・・」
「この国のみんな、心配していたんだよ!?
連合の調査機関が捜査の為にやって来た時も偽証で上手くすり抜けて・・・
みんな兄ちゃんのコトを信頼しているからそれが出来たんだ。だから、戻ってきなよ!」
「・・・・・・俺には・・・するべき事がある。そして、資格は無い。
あの狂気の血を最も色濃く受け継ぐ俺にはこの国を導く事など許されてはならん。」
ばんっ!
「兄ちゃんと『父さん』は全く違うじゃないか!」
「あなたの兄・・・2年半前まで専制君主政治を執り、
この国どころか周辺諸国までその名を轟かせ、恐怖に陥れていた・・・」
「つまり・・・“ロードハート・ウィルスタイン”・・・の息子・・・?」
「・・・・・・おるのだろう?
そなた達の協力者に、今もこの国に共に居るハズだ。
今は・・・ロックハート・クラウンと名乗っておるそうだな。」
「・・・やはり・・・ロックハートが・・・・・・」
「滅んだ一等王家の・・・」
「・・・そう・・・・・・私などではない。この国の真の正統後継者だ。」
「・・・その話は2年半前にしたハズだ。」
「じゃあ・・・・・・まだ、アリスさんの事を自分のせいにして・・・!?」
「・・・・・・・・・」
「アリスさんのコトだって、兄ちゃんのせいじゃないってみんな」
「周りがどう言おうが・・・俺がそう思わなければ、俺の罪だ。
大体・・・俺はこんな事を話しに来たんじゃない。」
「! 思い出しましたわ・・・2年半前のユーリケイル紛争終結の際に
父であるロードハートが息子を殺した・・・と。」
それが世間一般に流布されている情報―――
「・・・いや、ロックハートがその様に話を流せと・・・
彼は私の兄とは違い、正しき王のあり方を知っていた。それが故に己を許せないのだ。
守りたくても守れなかった者と・・・何より己の中に流れる血を・・・」
「・・・・・・では、彼は自身に資格がないと・・・?」
「その通り・・・彼は異父兄弟の弟を王子にする事だけを我々、
解放軍の王族と議会に託し、行く先を告げずに消えたのだ。」
「・・・!ヴィンセント王子は異父兄弟・・・」
「・・・そう・・・ヴィンセントは、王妃と恋仲にあった者の間に生まれた子だ。」
「バカな・・・・・・ヴィンセント王子はあなたの・・・・・・そうか。」
しかし、考えた事は言葉に出すべき事ではなかった。
「違う・・・誤解しないでくれ。私の実の子では無い。」
しかし、すぐさま否定されたので半ば安心した。
どうやらその否定は本当らしい。
「私の息子は3年前に兄の手の者に殺されている。
ヴィンセントと丁度同い年でな・・・名前も顔も然程知られておらんかったから、
丁度良いと、ロックハートは自分が継ぐべきその王位をヴィンセントに託したのだ。
私もあの心優しいヴィンセントならば・・・と息子として迎えた。
ロックハート自身にもその待遇を与えたかったが・・・
頑なに拒否され続けた・・・・・・・・・」
「・・・・・・そして・・・消えた後に・・・」
「そう・・・ソーライトのデーモンバスターとして生きていた。」
「・・・俺が話したいのはコーデリア姫の事だ。」
「ちょっと待ってよ・・・話を」
「言っただろう!」
「!」
「・・・俺には資格も権利もないと。
優しい母上の血と強きあの人の血を受け継ぐお前だからこそ、
俺はお前に・・・俺がこの国で成そうと思っていたこと全てを託した。」
「――――――ッ!それでも・・・!」
「・・・託した・・・
だが、“今の”俺には成さなければコトが残されている。
だから、お前にもう1つ託すんだ。」