ACT.60 再会/糸


「は・・・話が全然理解できないよ・・・!
 刻印なんて・・・そんな話・・・!」

「・・・・・・全て真実だ。そして、俺の右手のこれが示している。」

「―――――――――!」

緑色の刻印。
守りを司る六角形を模している。

「全て真実だ。
 この時代の刻印を廻る戦いが明るみになったのは、ソーライト事件・・・
 その前後にも小国が自滅や紛争・・・前例の無いことばかりだ。
 そして、遂には世界最大とも言われるローテルダムだ。」

「・・・もしかして・・・
 コーデリア姫がここに来たのは単に助けを求めに・・・だけじゃないんだね・・・・・・?」

「・・・・・・そうだ。
 俺たちは、ラゥムが率いるローテルダムと、
 このユーリケイルの戦争を回避する為にその可能性を示唆し、最大限の防衛策を執る為に来た。」

ザッ・・・

「・・・・・・俺の敵はこの人間界の混乱に乗じ、
 いや・・・更なる混沌を作り出し、その中で己の野望を遂行している。
 これ以上・・・奴の思い通りにさせてはならん。
 自己中心的でわがままな事ばかり言っている俺を許せとは・・・いや、むしろ憎め。
 だが・・・それでもお前には、コーデリア姫を守って貰いたい。」

「・・・でも・・・僕は・・・・・・」

そう、肝心の彼女に―――

「・・・嫌われている、か?
 本当に嫌っているのなら、俺達の説得でも動かなかっただろう。
 彼女はそれほどに意志の強い姫だ。だが、実際はこの場に来ている。
 何故だ?
 少なからずお前を信頼している事の他に理由は無い。
 決められた婚姻だろうと、彼女と誰かを繋ぐ糸は今、数え切れる程度だ。だから・・・」

ぐっ・・・

「・・・分かったよ。僕はこの国の正統後継者だ。
 姫が僕を頼りにしてくれているのなら、僕を信頼してくれる人達の力も借りて、
 これから起ころうとしている事を鎮める。その敵の思い通りにはさせないよ。」

「・・・すまない・・・・・・」

「何言ってるんだよ・・・僕が甘えすぎていたんだ・・・
 兄ちゃんの痛みを知らないで・・・ね。
 大丈夫・・・この国の全ては僕と父さんで背負うよ。」

コンコン。

「――――――!」

“ヴィンセント様?国王がお呼びです。”

「あ、あぁ、今行くよ!」

「・・・やはり俺より王子らしいな。」

王子として、自体生きた事が無いように思う。

「・・・・・・そうかな・・・」

「・・・もう・・・行くぞ。」

「また・・・来てくれるよね。兄ちゃん。」

「・・・・・・俺はお尋ね者だからな・・・
 捕まらん限りは会えるだろうな。」

ヴンッ・・・・・・

「・・・・・・
 (・・・僕の知らない所でこんなに沢山の事が・・・・・・
 糸は・・・切らせはしない・・・必ず守る・・・!)」




同刻
「・・・これまでの事、
 とりあえず、キッドやロックハートがアレを持っている事は伏せて話したが・・・
 やはりにわかには信じられないだろうな。」

「・・・そうですわね。」

「・・・・・・ここまで話が大きくなってしまった・・・
 すまない・・・メノウさん・・・」

「私の前では・・・謝ってばかりですわね・・・」


あの子の事を想っているんなら、飛んで行かないように中心になってくれないかい?


「・・・たとえどこに飛んでいったとしても
 あなたが戻って来ればそれで構わないから。」

「・・・・・・ありがとう・・・」

いつも謝った後はありがとうと言って、
そして抱きしめる。

「・・・必ず終わらせよう・・・・・・そうしたら・・・」

「ええ・・・・・・」