ACT.6 司書長
翌日 首都ローテルダム 中央大図書館
「・・・とまぁ・・・来てみたのはいいんスけど・・・」
「ホントに頼み込んだりとかするんですか・・・?」
「ま。黙って僕についてきなよ。」
(先輩の事だから、心配はいらねぇだろーけど・・・でもなぁ・・・)
(流石に出稽古してるって言っても・・・ねぇ。)
所詮は一般人。そう簡単には無理だろう。うん、絶対無理だ。
「おや、ソウジ君か。調べ物でも?」
予想外に門番が何でそんなにフレンドリー?
「えぇ。でいいですか?」
「全然問題ナッシング。オッケーだよ。スルー、スルー。連れの君らも行っていいよ。」
マジでか。
(やっぱこの人・・・色んな意味で超人だ・・・)
(・・・城の門番を顔パスって・・・)
門番と言っても、正門の手前にある小門。
一般人は証明書が無いと通る事は出来ない。正門は無論不可。
で、図書館に到着。
「ふへー・・・・・・」
「すっごぉい・・・てゆーか・・・学校のと比べ物にしちゃいけないような・・・」
「別に、一般人が入っちゃいけないって事は無いんだ、隣の別館の方はね。
ただ、この本館は歴史的に重要な事とか、もっと奥には軍事的な事とか所蔵されてる。
まぁ・・・僕もここに入ったのは2度目だけどね。」
そんな機密を言っていいんですか?ソウジさん。
「やーっぱり、ソウジさんってキッドより12倍は凄いですね。」
「何だよ・・・その12倍って・・・」
「15倍って言われないだけマシだと思いなさいよ。バカ。」
「んだと!?」
「あらあら・・・賑やかだと思ったら・・・ソウジ君でしたの?」
入り口の右手にあるカウンターから落ち着いた感じの声。
「あ・・・メノウさん。スミマセン。」
(すっげぇ・・・金髪+メガネ+美人だ・・・有り得ねぇ・・・神器揃ってるよ。)
(・・・負けた・・・ありとあらゆる面で負けた・・・)
っていうか、何の神器だよ。
「紹介するよ。彼女はここの司書長(館長)のメノウ・クルストさん。
メノウさん、彼がキッド・ベルビオス君で彼女がリノン・ミシュトさんです。」
「はじめまして。あなた達のことはソウジ君からよく聞いてますわ。
ケンカは絶えないけど、とても仲のいいカップルだって。」
「「激しく違います。」」
「フフ。それで・・・今日はどうしたの?別館の方では調べられないコトでも?」
「えぇ。まぁ・・・ちょっと、色々とありまして・・・」
「・・・そうなの。ソウジ君だったら、見張って無くてもいいですわね。
まぁ、借りる本は私に教えて下さった方が後々、助かりますけど。」
「ええ。それはもう、しっかりと。」
(何か・・・仲良さげじゃない・・・?)
(あん・・・?)
(ゴメン・・・聞く相手違ったみたいね。忘れて。)
(んなコト、最初っから分かってるっての・・・ただの知り合いじゃねぇだろ、ありゃ。)
何年も付き合いがある、そんな雰囲気がある。
「何してる?僕らは部外者には変わりないんだから、速く調べていこう。」
“本館”と言うだけあって、蔵書の数が尋常では無い・・・
整理されていない書籍がいくつもあり、
司書の彼女ですらその数を把握できていないかもしれない。
「魔力か・・・だとしたら、精霊か魔物って事になるな。」
「精霊はないと思うッスよ。あんな口悪いのが妖精だったら、正直ヘコむ。」
「礼儀正しいのが妖精とかの特徴だから・・・キッドの言う通りなら違うわよね。
(リノンちゃんのマメ知識的には妖精と精霊は厳密には違うけど、ここは妥協。)」
誰に言ってんの。
「・・・他にヒントになりそうなのは・・・お前の右手だな。」
「へ・・・・・・?」
「隠さず見せろ。少し痙攣していたようだから気にはなっていたんだ。」
右腕の袖を捲り上げる。
「・・・・・・これは・・・・・・」
「例の紅い光の後に焼きついた感じで・・・」
「アザ・・・ではないな。どちからというと、タトゥの様な・・・」
「けど、彫ってなんかもちろん、ないんですよね。」
そんな痕ではない。極薄いシールを貼っているようなそんな感じだ。
「・・・特殊な魔法を使う時の呪印か何かかもしれないな。」
「レベルの高い魔術士が、詠唱短縮の為に入れてる呪印ですよね。」
「その可能性が高いかもしれない・・・だが、こんなモノは訊いたことがないな・・・
古ければ古い本ほど、何かヒントがあるかもしれない。」
「・・・ったく、いっつも問題起こしてくれるんだから・・・」
「何だよ・・・恩を売る気なんざ、更々ねぇけど、誰のお陰で助かったと思ってんだ。」
「・・・・・・昨日僕がいなければ、お前たち2人とも死んでいたが・・・?」
「・・・・・・さてと、探すか!」
「そうね!」
(扱い易いと言うか・・・何と言うか・・・)