ACT.7 総隊長
「それじゃぁ、この5冊借りていきますね。」
「あら・・・それだけで?」
「えぇ。というより、これ以上は持ち運び不可能で。」
「んー・・・・・それもそうですわね。キッド君、リノンさん。
分からないコトがあったら、私に言えばここは開けてあげますわ。」
「「ありがとうございます!」」
「それから、ソウジ君。先ほど連絡があったのですが、
総隊長が今後の出稽古の事で用があるそうですわ。」
「そうですか。わざわざ、スミマセン。
そう言うわけだから、お前たちは城下町で待ってていいぞ。」
「いや、俺も行くッスよ。隊長サンに会ってみたいし。」
「キッドに自慢されんのヤだから、私も付いていきます。」
素直に言えよ・・・
「まぁ、別に構わないが・・・それじゃ、失礼しました。」
「また遊びにいらしてね。」
騎兵隊・総隊長室
「そうか、君がスネイク先生のご子息か。」
「オヤジ・・・いや、父の事をご存知なのですか?」
無理して敬語。
「昔は恥ずかしながら、出来が悪すぎてな。いや、今も変わりないんだが。
よく、あの人には世話になったんだ。そうか、そういえば何処と無く雰囲気が似ているな。」
ローテルダム騎兵隊第一大隊長及び騎兵隊総隊長『クライセント・クロウ』。
20代ながら北半球最強と言われる程の人で、槍の名手。
諸外国からは『紅錬(ぐれん)の槍』と呼ばれ、怖れられている。
「スミマセン。隊長さん。余計なの2人も連れてきてしまって。」
(何か、そう言われてもムカつかないよな。)
(明らかに人望の違いよね。)
「いや、我々が守るべき国民との交流も重要・・・いや、当然の事だからな。
何より・・・昨日のビサイドでの戦闘に関しては、
向こうに送った上官の判断ミスがあの様な惨事になってしまった・・・
特に君たちの高校周辺の被害は・・・・・・全ては総隊長である俺の責任だ。申し訳なかった。」
「い、いや、そんな・・・隊長さんが謝る必要なんてこれっぽっちも・・・」
「本来なら、今日にでもビサイドに向かいたかったのだが、
体裁を気にするバカな連中が五月蠅くてな・・・
君たち2人をビサイドの代表として・・・という訳だ。必ず、行きたいのだが。」
「町のみんなにもそう伝えておきます。隊長さんの心を必ずみんな理解してくれます。」
うわべのセリフでは無い。眼を見てそう思った。
「そう言って貰えるだけでも嬉しいな。しかし、1つ疑問があるのだが・・・
あの数の魔物が増援前に全滅したらしいが・・・君達、何か知らないか?
帰って来た部下たちは皆、紅い閃光が走ったと口を揃えるんだが・・・」
「あ・・・それは・・・」
「彼女の魔法と彼の剣の腕前のお陰ですよ。」
ソウジが割って入った。
(・・・ソウジさん・・・?)
「彼らは16年来の幼馴染でして、いざという時には息が合うんですよ。
恐らく、彼女の光魔法か何かを使用した魔法剣技で蹴散らしたのでしょう。」
「そうか。君たちを御手本にしなければならないな。
全く・・・最近は腑抜けた連中が多すぎて困る。」
「・・・隊長・・・本題に移りたいのですが・・・」
「あ・・・そうだったな。単刀直入に言おう・・・・・・ソウジ君。
改めて、君に騎兵隊に入隊して貰いたいと思っている。」
「「―――――――――!?」」
総隊長直々のスカウト・・・それだけの期待、彼にはそれだけの腕があるというコトだ。
「・・・・・・・・・お断りします。」
「「ええっ!?何で!?」」
「・・・・・・やはり、そうか。だが、君は神刀流の免許皆伝。
人を救う事など、造作も無い腕前だ。君の様な者こそ、我が騎兵隊に来て欲しい。」
「・・・・・・・・・僕は僕のやり方で人を助けたいと思っています。」
(・・・やはり、3年前・・・カエデ君の件か・・・)
「もちろん、協力は惜しみません。ですが・・・入隊は・・・・・・」
・・・・・・―――。
「そうか・・・無理強いはせんさ。悪かったな、ソウジ君。」
「・・・いえ・・・それでは失礼します。」
足早に去っていく。
「あ、ちょ、先輩!?」
「失礼します!」
バタン・・・っ
「賑やかだな・・・だが・・・彼らのような後輩が居たとしても、
彼の心は・・・彼が為そうとする事は止められないだろう。」
強く手を握り締める。
「・・・無力だな・・・・・・
君は俺を・・・・・・怒っているだろう?カエデ・・・」