ACT.61 修行/井の中の蛙



昼
「と言う事で、姫の王位奪回等の協力をして貰える事になった。」

相当無理な注文だとは思ったが、親交の深い国で助けられた。
もっとも、本来の目的は戦争勃発を食い止めるためだ。
コーデリアの王位奪回はその事後処理の過程にある。

「ラゥムの野郎はどーするんスか?あいつら、先輩の言う通りだったら、
 この前の襲撃をユーリケイルが魔物を呼び寄せてやらせたって言って来るんスよね?」

「ああ。その為に抵抗する準備を早急に整えてもらう為にも来たが・・・
 正直、先は難しい・・・世論が姫に味方するように動いてくれればいいんだが。」

「・・・それこそ、
 嘘だと思われてもいいからヒルダンテスの事を出してみるっていうのは?」

「それは無駄だ。」

毎度のように窓から入ってくる。

「ヒルダンテスはソーライトの特務大臣。
 世間的には、いや各国上層部の中でもヤツは死亡したことになっている。
 生存を知っている者はほんのごく一部だけだ。」

ロックハートの死体はそこには無かった。
だからこそ、余計にロックハートが全世界指名手配されている。

「・・・ソーライトに元凶自身が乗り込んでいたのか・・・」

「そうだ。あの男は国王の信頼を得て、僅か短期間でその地位を手に入れ・・・
 俺以外のデーモンバスターを従えて、あの国を滅ぼし姫をさらうつもりだった。」

「・・・オメーもデーモンバスターだろ?
 どーして気付かなかったんだよ。」

確かに気になる。

「・・・今は話す気は無い。」

(ったく・・・またそれかよ・・・)

何でもかんでも話さないから腹が立つ。

「んで、俺らはこれからどーするんスか?
 奴らが攻めて来るまでどれだけ時間がかかるか分かったもんじゃないし。」

「ああ・・・それは。」

「このアタシがボウヤ達に稽古をつけてやるさね。」

「「・・・・・・マジ?」」

「ほほう・・・まだ、このアタシを嘗めて・・・」


フッッ・・・


「「――――――消え・・・!?」」

「おるのかい?ボウヤにお嬢ちゃん。」

「!」

後ろから声と気配―――

「「・・・い・・・意義無いです・・・」」

(・・・神速ではないな・・・鏡崩刃と同じ性質の動作だ。
 ・・・俺の方が速い・・・)

「それから、そこの緑髪のボウヤもだよ。」

「・・・俺には必要ないでしょう。
 実戦に慣れていないキッドに集中的に指導する方が」

「はっ・・・・・・アンタもボウヤも大差は無いよ。」

「・・・・・・・・・・・・」

(へっへー!やっぱな!)

(あんたさ・・・限りなく、主人公の枠から遠のいてるよ。)

「・・・・・・聞き捨てならんな・・・」


チャキッ・・・


「・・・いくら、最強の女剣士として名を馳せたあなたとは言え・・・」

「アッハッハッハッハ!
 たかだか、50人やそこらを斬ったぐらいで自信でも付けたのかい?」

「――――――!(後ろ・・・!?いや・・・!)」


ゴッ・・・ギッ!!


「ッッ・・・!!」

猛烈な拳打―――それを何とか受け止めるが、手が痺れる。
まだ若いとは言え、隠居した人間の放つ物などではない。

(は・・・速ぇ・・・!
 一瞬、後ろに回りこんだように思ったのに・・・)

「いーや・・・人を斬った事を自慢する様なボウヤじゃないだろうけどね・・・
 片腹痛いさね・・・そんな程度の腕じゃ、トンガリ頭のボウヤとは大差ない。
 それに刻印には刻印使いが相手にならなくてどーする。修行も然り。」

「・・・・・・どうして知っている・・・」

「俺が教えた(笑)
 っていうか、ばーちゃんも“聖剣伝説”知ってたから楽だったぜ。」

「・・・・・・
 (秘匿事項をこうも簡単に・・・こいつは後で殺す。)」

「そんじゃ、ばーちゃん。宜しくお願いします。」

「師匠とお呼び。」

「うッス。師匠!オラ、お前も来いっての。」

「・・・チッ・・・・・・」

(初めて優位になれたって顔してるのがまた痛いよ・・・)

(どんどん小物化していないか、キッドの奴・・・)

うん、確実に小物化してるよ。

「リノン嬢ちゃんも来るんだよ。」

「え・・・?私ですか?」

「そこの2人にはお姫様のお守りをしてもらうからね。
 嬢ちゃんは、ボウヤ2人とは別枠でメニューがある。具現魔法のねぇ。」

「!」

「それじゃ、おばあちゃん。お願いするよ。」

「はいはい。そんじゃ、3人。
 今日は5時間みっちり鍛えてやるから覚悟しな。」

(・・・マジで・・・?)

(みたいね。)

(・・・・・・チッ・・・どうして俺まで・・・)