ACT.64 修行/不敵のシン
「うおおおおおっ!!」
気合を入れながら魔力を練り上げるも崩れ去る。
「くっそっ!!」
「・・・それじゃ、誰でも集中出来んだろうが・・・アホが。」
「んだと、コラァッ!」
バッ!
「――――――っ!」
キッドの眼前に掌を翳す。
「・・・言っておいてやる・・・今は見逃してやっているが、
俺はその刻印を殺す事は未だ諦めては居ない。使えるから、置いているだけだ。」
「テメ・・・」
「・・・悔しいがな・・・閃光の刻印に敵う攻撃主体の刻印は、
お前の紅の刻印以外には無い。本来なら、俺よりも先に使いこなせなければならん。
余計な所に力を注がずに集中しろ・・・ラゥム軍の襲撃にかこつけて、
ヒルダンテスも来るかもしれんのだからな・・・」
右手を握り締めている。
全て、ヒルダンテスへの憎しみからきているのだとキッドは察する。
「(んだよ・・・コイツ。素直に言えっての。)
言われなくても分かってるってーの。
それに、俺も言っておくぜ。この龍は俺の手で成仏させる。」
「・・・・・・言ったな・・・」
「ああ。絶対に嘘はつかねぇよ。」
「・・・・・・分かった。その言葉、信じてやる。」
同刻
「ねぇ、ソウジ様ー。」
「何ですか?」
「ソウジ様は特訓しなくていいの?」
「あぁ、僕は最終奥義の伝授以外は済んでいますからね。
それにお祖母ちゃんに頼んだのは、魔力の扱い方だから。
剣術は一朝一夕でどうにかなるものじゃないけれど、魔力は別。
コツが分かれば、後は結構早いからね・・・だから、あの3人には魔力の勉強。
僕は元々、魔力が余り無い人間だから、やったところで意味は無いんですよ。」
「そーなんだぁ・・・ソウジ様でも弱点ってあるんだね。」
「ハハ・・・僕は欠点だらけの男ですよ。」
それはたまに嫌味に聞こえる時があると思う。
「そんなコト無いョ!っていうか、完璧だョ!
ソウジ様が欠点だらけなら、世の中の男なんか存在価値無いョ!石ころと同じ!」
(そこまで言い切りますか。あなたは。)
(キッドの方が人間的に出来ていると僕は思うんだけどなァ・・・)
何気にバカにしてねェ?
「でも、ロックハート様は別かも。陰がある人もカッコイイし☆」
(キッド君かわいそう・・・)
(アイツ、姫の前じゃいい所あんまり見せて無いから・・・)
がたっ。
「ね、ね。外に行くのってダメ?」
「・・・どうします?メノウさん。」
「そうですわね・・・一日中家の中と言うのも身体に毒ですわよね・・・」
「・・・とりあえず、城に行って周りに護衛を付けてもらった上で行きましょうか。」
「それなら良いと思いますわ。姫もそれでよろしいですか?」
「うん。オッケーだョ。」
同刻 ローテルダム城
『って訳で、思わぬ反撃を食らって帰ってきちゃいまし』
が ゴッッ!!
『っぁっっ!!・・・てて・・・』
いきなり殴られるとは思わなかった。
それ以上にこの男の拳打の威力の凄まじさに驚く。
が、笑って見せるのがシン・ヤマザキである。
『・・・“連れて帰って来い”と言ったハズだ・・・シン・・・!』
『・・・・・・クス・・・
感情的になっても余り良い事はありませんよ、ラゥム様?』
『―――――――――貴様・・・・・・』
その眼に不信感を覚える・・・
『準備は出来たんでしょう?
だったら、僕らも再出陣させて頂きますよ。』
『貴様・・・何を・・・・・・』
ザッ・・・
『・・・僕を単なる駒だと思わない方がいい・・・ですよ?』
『何を考えている!!』
『さぁ・・・・・・それは、あなたの腹心にでも聞けばいいじゃないですか。
それじゃ、失礼しますね。』
フゥ・・・・・・ッ・・・
『・・・・・・シン・・・ヤマザキ・・・やはり危険か。』