ACT.65 修行/天使と精霊


5時間後
「それじゃ、成果を見せてもらおうかね。」

「「・・・・・・」」

キッド、ロックハート共に球体を創り上げる。

「これで十分だろう・・・?」

「ここまでやらせといて、失格は無しだぜ。」

「すっごい・・・・・・コブシ大なのに魔力の圧縮率が違う・・・」

「・・・・・・仕方が無いねぇ。生成術は合格さね。
 後は実戦でやるしかないからね。明日からは剣の方をやってあげるよ。」

「おっしゃああっ!やっぱ、俺はスゲェ!」

「アンタの勉強以外の要領の良さには感心するわ、実際。」

素直・・・?に認めたれよ。

「ほー・・・?だったら、オメーの今日の成果ってのを見せてみろよ。」

「・・・俺も少し気になるな。
 (魔力の雰囲気が元より違うと、シルフィードも言っているしな。・・・)」

「ボウヤ達、この嬢ちゃんを嘗めない方がいいよ。」


バッ!


「仕方ないわね・・・・・・
 でも、覚悟しておいてよ。2人とも腰抜かすから。」

手を組むと同時に魔力が圧縮される。
魔力の塊は急激に大きくなるも、密度は更に高くなり熱を帯び始める。

「私の新魔法の1つ目・・・・・・“槍を携え進む者”!」

「これは・・・・・・!!」


ゴッッッ!!!


「ワルキューレ二十二支、“ゲイレルル”!」

槍が大地に突き刺さり、共に翼の生えた女性が舞い降りる。

「うぉ・・・・・・何だよ、この天使・・・」

「・・・アホが・・・
 神話に登場するオーディンの忠実な兵、ワルキューレの1人だ。」

「この程度は一般人でも出来るけど・・・
 優等生のリノンちゃんは一味違うわよ。そーでしょ?ルル。」

指をふって合図をする。

“・・・初めまして。
 ワルキューレ二十二支の先鋒、ゲイレルルだ。”

「なぁ・・・・・・っっ!!」

「しゃ、喋っ・・・喋った!?バカな・・・!
 人外で話せるのは上位魔族か精霊ぐらいだぞ・・・」

確かに腰を抜かした。

「アッハッハッハ。アタシも流石にコレには驚いたさね。
 超上級の魔術師でも難しいとされる、具現魔法精神注入型を作っちゃったからねぇ。
 具現魔法ってのは本来、意志はあるけどそれは術者の思考と全く同じ、言わば分身。
 同じ状況に置かれると、術者と同じ様な行動しか出来ないのが欠点。」

「けど、ルルは違うわ。私とは全く別の精神を持ってる。
 だから、私が考え付かない様な事で行動してくれる。」

「君は君で別の行動を取り、戦闘を有利に出来る・・・か。」

「そー言う事。ごめんね、用も無いのに呼び出して。」

役目が無いのだと具現魔法自体が認識し、自ら消える。

「マジでビビッたぜ・・・お前って案外すごいんだな。」

「何よ、私が詠唱魔法(フツーの魔法)だけだと思ってた?」

「学校魔法っつったら、その程度だろーが。俺だって少し習ったけどよ。
 魔術科ってのはそーいうハイレベルな事やってんのか?」

「やってないわよ。私だから出来るの。」

ホントはちったぁやってる。

「・・・具現魔法か。
 刻印使いや魔族にどれだけ対抗出来ると思う?シルフィード。」

「あ・・・?何言ってんだ、お前。」


      ドッッッ!!


“そうね・・・今で言うAクラス程度までならいい所までいける。
 こんな女の子が出来るとは思わなかった。”

「は・・・・・・はぁ?何だよ、オメーも具現・・・?」

碧色の翼を持った小さな妖精のようなモノが
光を放ちながらロックハートの周りを飛んでいる。

「違う・・・詠唱がなかったから・・・もしかして・・・」

「こりゃたまげたねぇ・・・ホントに刻印に封じ込められていたのかい。」

「どーいう・・・・・・」

「まったく鈍い奴だな・・・この妖精こそが、
 俺の蒼空の刻印の源・・・風を統べる精霊シルフィードだ。
 お前だってやろうと思えば呼べるだろうが・・・」

“呼ばない方がいいね・・・というより、宿主として認めさせないと出て来ない。”

「じゃあ、やっぱり俺はまだ認められて無いのか。」

「・・・当然だ・・・一朝一夕で手懐けられる程、簡単な奴ではない。」

“・・・そろそろ、大体の事は話した方がいいね・・・”

「・・・ああ。姫と護衛も観光から帰って来たようだしな。」


ザッ


「よく分かったな。僕らが外に出ているなんて。」

「・・・気配で分かる。」

(・・・・・・やっぱ、俺ってば置いてけぼり食らってねぇか・・・?)

うん。食らってる。

「・・・今日のメニューは終わったことだ。
 お前たちを信用して・・・刻印と石にまつわる話をしてやる。」