ACT.66 聖剣伝説


「食事も終わったし、そろそろ。」

「・・・分かった。まず最初に言っておく。
 お前達が調べて知った話と重複する事もあるだろうが、構わず話す。
 質問は後だ・・・先に話させろ。」

(偉そうなのがムカつく。)

(そーいう態度だから、ダメなのよ、バカ。
 大体、聞かなきゃ私たちには何にも分かんないでしょ。)

「じゃあ、始めてくれ。」

「・・・・・・まず、俺達が目視した事がある刻印は、
 キッドの持つ炎を司る紅、俺の風を司る蒼空、ヒルダンテスの雷を司る閃光の3つ。
 そして未だ見ないのが水の神海、氷の碑雹(ひひょう)、土の大地の3つ・・・
 つまり刻印はこの世界に6つ存在している事になる。
 それぞれにそれぞれの属性を司る精霊が封印されている。」

ザッ。

「何故、封印されたのか。それは大昔・・・何千年も昔の話だ。
 俺の刻印の源である精霊シルフィードから聞いた話だから、
 少しばかり穴はあるが大体はこうだ・・・」


数千年昔、この世界の人間が文明というモノを持ち数百年、
同時に魔物達が扱いし、摩訶不思議な術であった魔法を扱える様になった頃、
世界を混沌の闇に陥れようとしていた3つの力があった。

大地を閃光の如く駈けずり、雷の力を携えた獅子・・・
漆黒の海底から美しき海岸まで支配せし、大海蛇・・・
天空を翔け、最も怖れらし、灼熱の炎を纏いし龍・・・

この3つの力。世界史の中でも類を見ない程の力を持った存在だった。
それぞれは均等に世界を、且つそれぞれがせめぎ合い世界を恐怖の渦へと誘っていた。

それらの恐怖が数十年続いたある時、
6人の勇士達が立ち上がりその3つの力と戦おうとした。
だが、所詮は人間の扱う魔力と力・・・1体を相手にしても叶う訳も無かった・・・
そこで彼らは、人間と親交の深い他の精霊達に力を借りようとした。
だが既に、炎、雷、水の高名な精霊は消されており、
残った風のシルフィード、氷のグラソン、岩のシリクルオヤシの3体に力を求め、
彼らも共に戦う事になった。


「それが・・・今で言う聖剣伝説の始まりだ。」

「・・・俺の中に居る龍が・・・大昔に・・・」


死闘に継ぐ死闘・・・地獄絵図が続き3年。精霊達は一つの妙案に辿り着いた。
精霊の生命力を以って、「封じ込める」事に・・・

今は殺す事は出来ずとも、何かに封じ込めれば取り合えずこの世は助かり、
その後の対策を幾らでも考える事が出来る・・・
故にこの案が、6人の勇士との間でも決まり決行する事になった。


「だが・・・ここからは今に伝わる聖剣伝説とは最も違う所だ。
 何故、聖剣と呼ばれながら、人の身体にその痕跡を残し入り込むのか・・・」

「「「「―――――――――。」」」」

「真実は今に伝わる勇者達が勝利し終わる・・・などという綺麗な話ではない。
 6人の勇者も結局、この世界の為に戦ったのは4人だけだったのだからな。」

「「「なっ・・・・・・・・・」」」

「・・・最終局面の始まりを告げたのは、ある1人の勇士の裏切りだった。」