ACT.68 6つ


究極の戦いは熾烈を極めた。

ぶつかり合う力は、今も尚この時代にもその痕跡を各地に遺している。

それ程の戦い。それは最初から分かっていた。
彼らが策無しに戦う訳はなかった。

2つの強大な力をどうするのか・・・
それは先に言った「封じ込める」事・・・封印する事・・・
しかし、2つの力は精霊として生きていた時よりも膨大になっていた。
6つの精霊は世界の属性の一端となる存在。
構成する力は全て均等・・・均等な時は誰かが突出する事も無く、
精霊自身も世界に出る事は無い・・・・・・

だが、己の闇に支配された2つの力は、術者の力も得て力を増していた。
その最大値を削り、元と同じにすれば互いに干渉し合い、
理論上、封印することが出来る。



「ええ。そうですわね。力の強い魔物相手にもそれは言えますわ。
 特殊な術で魔力の最大値を無理矢理下げて封印し、
 後で確実に倒すと言うのは魔術士団でも時より使われる術ですから。」

「じゃあ、その術ってのを・・・?」

「いや・・・それだけでは不可能だ。最終調整には使っただろうがな。
 ・・・オリハルコンと言う鉱物を知っているか?」

「あー・・・メチャクチャ硬いんだったっけ?
 昔話でしか聞いた事無いけどな。」

「この世界にある物質で最も硬い。
 ダイヤよりもな。そして、1つの特性がある。」

もっとも、確認されている現存鉱物で最硬はダイヤモンドである。

「確か、触れるだけでも魔力を消す・・・だったよね。」

リノンが答える。

「そうだ・・・」

「なるほど・・・聖剣伝説・・・つまり、
 オリハルコンを利用した刃なりを使えば、削る事が出来る。」

「その通り。
 聖剣伝説に伝わる、聖剣とはオリハルコンで作られた剣だ。」

「・・・・・・あれ・・・?
 精霊さんの力を持ってたら魔力が沢山あるから、
 その中の誰かが剣を使ったら自分のもなくなっちゃうョ。」

(あ・・・結構、頭いいのな、この姫。)

(ボウヤが閃くのが遅いのさね。)

「・・・それも答えよう。
 とにかく、封印とはつまり、その力だけを封じる・・・
 というのは違う・・・『その力を持つ存在ごと封じる』。
 つまりは、『精霊の力を持つ人間』を封印する・・・
 ならば、どうして全ての人間が封印されたのにも関わらず、
 こんな聖剣などという具体的な話が今も尚、語り継がれているのか・・・」

「・・・他に協力者が居た。」

「その通りだ、イムラ。」



その刃を振るったのは幼い少年だった。
魔力を持たない「ゼロ」の少年だった。
魔力の無いゼロ・・・故に、少年はその刃を持つ事が出来た。
自身の魔力を削られる事が無く、尚且つ振るうことが出来る。

精霊達が2つの存在の力をある程度使い果たさせ・・・
少年はその力の源を斬り裂いた。



「オリハルコンの刃で斬り裂かれた雷と水、
 そして、同じく力を増していた他の力も元の力にまで削った。
 後は簡単だったという。協力者の魔術士たちが作った魔法陣の中心に
 刃を地面に突き立て・・・今までオリハルコンが吸収した魔力を使って、
 6つの力は余す所無く封印された・・・・・・・・・」

(あー、あの有名な絵だな。)

物語の挿絵や、絵画で何枚も描かれている。
ただ、脚色や事実が歪曲された形で伝えられており、その内容は様々だ。

「封印された瞬間に、オリハルコンの剣は砕け散り、塵となった。
 だが、その内の6つの破片が世界に飛び散り、6人の女性に埋め込まれた。」

「!まさか、それが・・・・・・」

「そう。鍵といわれる6つの石だ。
 その6つの石にはそれぞれの属性が宿っており、
 封印された力をセーブする役目を果たすようになった・・・」

「そんなコトが・・・」

(むー、ホントにコーディの中にあるのかなァ・・・)

分かる物では無いと思う。

「これで大体の話だ・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「ってよ・・・待てよ、おい・・・
 分かった事と分からねぇ事が2つ出来たぜ。」