ACT.70 忠告


翌日 7月25日

“この度の城下への襲撃、父の暗殺とコーデリア姫暗殺未遂!
 全ての黒幕は同志だと信じていたはずのユーリケイルだったのだ!”

「さっき始まったばかりか。」

「そうみたいッス。全世界に流してるみたいッスよ。」

“証拠ならば十二分に揃っている!それらの詳細なリストを公開しえる限り示そう!”

「・・・ここまで盛大に事をでっち上げるとはね・・・」

“そして私はユーリケイルに対し、この度の悪行と愚行を正すべく、宣戦布告する!
 だが、私は貴国の返事を待とうと思う。もし、懺悔の心があるのならば、
 国王自らこの場に赴き、事のあらましを全世界に伝えるのだ。
 さすれば、われらローテルダムの怒りも静まろう。”

(・・・姫暗殺未遂の時も決して緻密な犯行とは言えなかった。
 元より国外へ追い出すつもりだったんだろうが、腑に落ちない・・・
 ラゥムがここまで考えのない男だとは到底思えない・・・)

自分と対決した腹心であるシン・ヤマザキの存在もある。
ソウジはシンによって、あの選挙へ誘導させられた。
まさかこれにシンが助言をした状態だとは思えないのだ。

「・・・見ていられないな。
 姫、メノウさん。直ちに城へ向かいましょう。」

ザッ

「じゃあ、俺も」

「待ちな、ボウヤ。アンタはそんな偉いトコに行ったって無意味だよ。
 ほかの2人もね・・・・・・・・・」

「で、でも。」

「あんた達には、まだ修行が残っている。それを投げ出す事は許さないよ。
 同じ様にソウジやメノウ、姫ちゃんには3人のやるべき事がある。
 アンタらは姫ちゃんをきっちり守れる様に強くならなきゃならないのさ。」

「・・・それは分からんでもないが・・・」

果たして間に合うのだろうか。
いくら教え手が伝説とまで言われた剣士であっても。

「俺達がローテルダムを出て約3日で、ユーリケイルに到着・・・
 ・・・姫暗殺未遂の時点でラゥム派の軍の準備が」

「このアタシに指図は許さないよ。
 それに姫ちゃんの暗殺失敗で、作戦は大幅に変わってるハズさね・・・
 宣戦布告してきたって事は準備完了。
 とは言っても、二大隊を動かすんだ・・・あと2日は軽くあるさね。
 そんな大人数を空間転移・・・それも分割移送ですら無理・・・確実にあと2日。
 その2日間で今の1.5倍は伸ばしてあげるから、ほら、さっさと外へ出る!」

(無茶苦茶な人だな・・・)





同刻 ローテルダム城

「・・・・・・・・・」

ガッッ!!

「・・・この国をどうするつもりだ・・・!」

「・・・世界征服しかないでしょう・・・総隊長。」

リカードは世界征服という言葉を冗談では言ってなどいない。
もしこんな作戦が成功してしまえば、ますます勢いづくのは明らかだ。

「・・・どうすればいい、リカード君・・・・・・
 このままではユーリケイルはおろか、
 先代の御2人が築き上げたローテルダムも、そして隣国をも巻き込んで・・・・・・」

「・・・・・・あなたのなさる事は決まっていると考え・・・勝手ながら、」

リカードが扉を開けると、数十名の隊士が居た。

「第一大隊と第四大隊の幹部をお呼び致しました。」

「!お前たち・・・・・・」

「俺らはアンタに付いていくぜ、クライセント総隊長。」

「全体の考えは既に一致してる。後は頭のあなただけだ。」

「部下の気持ちはもう固まってんのに、まだ悩み続ける気ッスか?」

「―――――――――・・・馬鹿を言うな。俺たちの進むべき道は1つだ。」

『・・・そう1つです。』

「「「!!!!」」」


ヂャキッッ!!


「・・・第二大隊所属の・・・・・・」

「「シン・ヤマザキ!!」」

全員が反射的に構える。
ソウジとの一件で既にその存在は知れ渡っている。

『まぁ、武器は下げて下さいよ。
 この通り、帯刀すらしていないんですし、僕、魔法も苦手ですから。』

ヘラヘラした態度が逆に神経を逆撫でる。

「・・・・・・下げろ。
 で・・・何をしに来た?動きの怪しい」

『ヤだなァ・・・
 どうしてみなさん、早とちりをするんでしょうねぇ。
 僕は単に取り引きをしようと思ってきただけなんですから・・・』

「取り引き・・・?
 ・・・何を企んでいる・・・」

『・・・“コーデリア姫にとっても・・・とてもいい事”ですよ。』

ニコニコ笑っている。

「うさんくせぇな・・・おい。」

と思われても仕方がないくらいに。

「国王サマの腹心のオメェが何でそんな事をよ。」

『・・・じゃ、取り引きは止めてこうしましょう。普通に教えちゃいます。
 あなたの指揮する部隊はユーリケイルに直接、向かってはならない。
 ローテルダムより北西40kmのソラブ大平原に向かって下さい。』

「何・・・・・・?」

訳が分からない。
何故、こんな事を教えてくるのか。

『でなければ・・・確実にユーリケイルは堕ちますから。』

「何だと・・・!?どういうことだ、ヤマザキ君!」

『フフ・・・・・・さぁ、そこまでは言えません。
 信じる信じないはあなた方、コーデリア派にお任せするとします。
 まぁ・・・僕の言葉に信じずに行く先を間違えたら・・・
 後悔するだけですけどね・・・・・・・・・』

「「「「・・・・・・・・・」」」」

『それじゃ、失礼します。“お仕事”頑張って下さいね。』


フッ・・・・・・


「・・・・・・・・・」

「隊長!あんなヤツの言う事は」

「いや、ソラブ大平原・・・
 現在の国王派の位置を考えれば、最大のポイントになる。
 我々にとってもう1つの敵性勢力に対処する為のな。」