ACT.72 若い力
ユーリケイル城
「兄弟とも親子とも思えん行動に出たものだ・・・
自分の姪や民を虐げる様な真似をして何になる・・・」
ユーリケイル現国王が呻く。
「・・・仰る通りです。しかし、この先、我々が後手に回ってしまっては、
ユーリケイルが火の海になる事は間違いありません。」
「うむ。先日、ソウジ君の忠告を貰ったお陰で、今ではいつでも出陣出来る。
しかし楽観して、向こうは2大隊のみを使うとしても、数では不利・・・
今の我が国の軍は完成してまだ1年半・・・余りに守る術が拙い・・・
やはり、私が一度何らかの声明を出し、回避する方が」
「いえ・・・それこそが後手に回る形になるでしょう。
あの男は、あなたが無意味な謝罪をしたとしても、
次は『断罪』の名を以って攻め込むのは目に見えています・・・」
「・・・そうだな。君の言う通りだ。」
徹底的に抗する方が後悔も無い、という意味かもしれない。
「とはいえ、僕自身、この国に火の粉を振り撒きたくは無い。
国境付近に部隊を展開してもらい、最前線に僕らが出て食い止めます。」
「な・・・何をバカなことを・・・」
「・・・確かにバカなことです・・・が。」
ザッ。
「ローテルダムにもコーデリア派が数多く存在しています。
軍で言えば、その筆頭はクライセント総隊長・・・」
「おお・・・そうだ、彼らがいた。」
「彼ならば、必ず何らかの行動を取って僕らを優位にして下さるはず・・・」
「彼の名はこの国にも轟いている。彼ほどの勇士ならば・・・」
コンコン。
「む、入って構わんぞ。」
「失礼致します。ローテルダムで動きがありましたので報告を。」
「ご苦労。聞かせてもらえるか?」
「・・・それが・・・・・・・・・・・・」
(・・・・・・・・・?)
高官が国王の耳元で囁いているので分からない。
「―――――――――!何と云う事を・・・」
「国王・・・・・・・・・・・・」
「うむ・・・・・・この度の宣戦布告を不当とし、
ローテルダム各地で反戦活動が行われるや否や、
騎兵隊と警察組織による弾圧・・・死傷者まで出ているという話もあるらしい・・・」
「・・・ラゥム・・・・・・!!」
ギリ・・・・・・っ
「他国でも宣戦布告とその弾圧に対して、
早くも抗議活動が広がっているらしいが・・・」
「・・・・・・国境到達予想時刻は分かりますか?」
先ほど部屋に来た高官に聞く。
「軍勢は第二、三大隊との事なので、数から考えれば明後日の昼ごろ・・・
というのが諜報部隊からの報告です。」
「ならば、早々に出撃の準備をせねばならないな。臨時会議を執り行う。
軍部の上官及び議員を全て第一議場に招集、市民の安全を図る為、
各都市の警察には第二種厳戒態勢を取るように通達してくれ!」
「はっ。」
タタッ!
「それでは、僕も姫の警護に戻らせて頂きます。」
「・・・・・・・・・ソウジ君。」
「何でしょうか・・・」
「・・・済まない・・・若い君達に力を借り続けて・・・」
「若い力だからこそ、役に立とうと何らかの力を振るうのですよ。
(そう・・・こうしておけば、あとで必ず仇とめぐり合える。
釣りは多く帰ってくる方がいいからね・・・)」
同刻
「はぁっ・・・・・・ぜぇっ・・・ぜぇっ・・・・・・!」
「どうしたんだい!?この程度じゃあ、兵隊の1人も倒せないよ!」
木刀を大きく振るう。
「さっさとかかってきな!」
「チィッ・・・・・・・・・
(これが『桜華のミサト』の力の片鱗か・・・)」
「くっ・・・そおっ!
2人がかりでこれじゃ、カッコつかねぇ!一本とってやる!」
「さぁ、起き上がったんなら来な。」