ACT.76 大戦/開戦前
翌日 7月27日午前11時 移動中
「足引っ張らないように頑張るね、ロックハート君。」
「・・・ああ。」
ザッ ザッ ザッ ザッ
(イムラが俺にリノンを当てたのは納得のいく判断だ。
魔法を使わないイムラなら、魔術士に当たった時、
ほぼ絶対的に彼女が魔法で応戦する・・・だが、それをさせたくない。
俺と組ませれば、俺が刻印と剣で一掃する事により、
彼女が戦争にほぼ参加しなくて済む・・・殺し合いをせずに済む訳だ。
姫を直接的に守る場合は致し方ないが、
こうなった以上、それに関わらせたくない・・・・・・後輩想いだな。)
ザッ・・・
「・・・頑張ろうとするのは構わんが、俺が頼むまでは見るだけで構わん。
いや・・・見るのも止めておいた方がいいかもしれんな。」
「・・・・・・斬るの・・・?」
大軍が迫ってきているのにこんな質問は
愚問だと思ったけれど、聞いてみた―――答えは分かってる。
「・・・・・・殺し合いでありながら、殺人では無い・・・それが戦争だ。
君やあのアホには理解出来んだろうし、する必要は無い。
ただ、これだけは分かって欲しい。戦争は己の正義を賭けた戦い。
それを賭けて戦う以上、敗北もまた認めなければならない。それが死であってもだ。」
「・・・・・・・・・」
「まぁ・・・極力、血は飛ばさんようにする。」
(どうしてだろう・・・
どうして、こんなに無理矢理、鬼になろうとするんだろう。
自分が守るべき姫が今も見つからないから・・・
っていうのもあるかもしれないけど、もっと特別な・・・
・・・それも関係の無い国へここまで命を張ろうとするのは・・・)
同刻
「ハッ・・・・・・はぁっ・・・・・・!!」
まだ―――
「ボウヤ。思い出しな。必ずあるハズさね。」
一撃だって入れれていない・・・
「くそ・・・っ・・・」
「その右手の龍を手に入れてからの戦いの中にボウヤが、
自然体で敵を倒した事が、必ずあるハズさね。
(遺伝ってのは信じないけど、あの大馬鹿の息子ならね。)」
「・・・っつっても・・・・・・」
足を引き摺って構える。
「・・・仕方ないね。
それじゃ、ルール変更さね。このエリアは無しにして・・・」
ドッ ―――――――――!!!
「――――――!(なんてばーちゃんだよ!)」
恐ろしい程の魔力の変化を肌で感じ取る―――
「アタシから攻める。
だから、ボウヤは返して一本入れな!!」
ガキッッッ!!
「ッ!!!(重い・・・速い・・・ッ!)」
「どうしたんだい!この程度!見えてるんだろう?!」
重く、速い剣撃―――
だが、自然と体が慣れているのが分かる。
いや―――身体がミサトの動きを察知している。
どこに動くのかさえ、次第に分かってくる。
「やっぱりねぇ!見えてるじゃないか!
あんたの能力は単なる先見なんかじゃぁない!
あらゆる事象・・・意識を持った物体でさえ、
その終極点を見ることが出来る“見切り”を更に超える能力!」
ガ ギィッ!!!
「見え・・・・・・た・・・ッ!!!」
「そうさ、それでいいんだよ!
あとは、アタシのスピードをいなし切って一本入れなァッ!」