ACT.77 大戦/帝国参戦


30分後

「・・・・・・来たか。」

次第にローテルダムの旗印が近付いてくるのが視認出来るようになって来た。

「こっち側には中隊が2つぐらいって聞いてたけど・・・やっぱり少ないんだね。」

「・・・ああ。
 攻めては来んだろう・・・だが、奴らが手を出すまでは出さん。
 ユーリケイルもそのつもりでこの場の戦線部隊にも伝えてあるらしい。」

「正当防衛の口実作り?」

「・・・ああ。
 連中を退け、ラゥムを失権させる際に使う。」

「そう・・・
 (やだなァ、こー言う話・・・
 私達にとって大切な事だけど、ドロドロし過ぎっていうか・・・)」


ザッ・・・


「えーっと、君達が国王から御達しがあった・・・だね?
 私はこの東側の部隊長だ。君達はこの国の軍人では無いから、
 指揮権は及ばないけれど、どう行動するつもりだ?」

「・・・着かず離れずの位置に居るつもりだ。
 そちらに迷惑はかけん。
 ただし・・・俺が緑の風を放つ時は下がって貰いたい。」

「・・・分かった、協力お願いする。
 (何か訳有りの様だが・・・いや、その前に・・・
 この銀髪サングラスの少年・・・・・・どこかで・・・)」

「隊長!」

下士官が駆け寄ってくる。

「どうも様子がおかしいです。
 敵、部隊数が想定より余りに多いのです!今見えている部隊の更に奥に・・・!」

「何・・・?まさか、先遣隊無しに・・・」

「・・・いや・・・・・・違うな。」

鞘を腰から外し、いつでも抜刀出来る様にする。

「流石のイムラでもここまでは断言出来んようだったな・・・
 もっとも・・・最初からこんな考えを思いつく事自体がありえんのだがな。」

「どういうこと・・・?ロックハート君・・・」

抽象的で今1つ分かりにくい。

「・・・・・・・・・よく見てみろ・・・この先を。」


「「「・・・・・・・・・・・・!!!」」」


・・・灼熱の如き紅い旗印・・・・・・




同刻

「イムラ君!これは・・・」

「・・・・・・ラゥムめ・・・・・・」

「まさか・・・
 ・・・敵国であるハズの『トルレイト帝国』が来ているとは!!
 第一種戦闘態勢に移行!国王にもご連絡を!展開部隊にも同じく!」

一気に、陣形を変化させていく。
でなければ、負ける―――トルレイト帝国の戦力は殲滅戦に長けている。
保守的なものでは気持ちの時点で負けてしまうのだ・・・

「・・・第一陣は恐らく1万・・・
 ・・・厳しい戦いになるな・・・」

「すみません・・・僕がもっと」

「何を言っているんだ、君達がこの国へ来てくれたからこそ、
 事前にこれ程の準備が出来たのだ。我々は・・・必ずやこの国を守る。」
「ええ。
 (ラゥム・・・・・・お前の首は僕が取る。)」




十数分後 再び、ロックハート・リノン側

「・・・前方、1kmで一旦停止しました。
 そこから三小隊が分離して向かってきています。
 次いで中隊規模が進行してくると予想されます。」

「チッ・・・あの旗印は間違いなくトルレイト・・・・・・結託したのか・・・
 2年前に敵対していたのにも関わらず、
 ラゥムという男は報国の志と共に散っていた者達をこうも簡単に侮辱を・・・」


ザ ッ  ッ ! !


「・・・10分間傍観で構わない・・・3小隊、全て俺が倒す。」

「「「なっっ・・・・・・!!」」」

「(違う・・・そう云う意味だけじゃない・・・
 ユーリケイル自体が戦争に関わって欲しくないから・・・・・・・・・)
 私も前に出るよ。やっぱり、私が心に決めてここまで来たから。」

「・・・・・・君は5分間は何もしなくていい・・・
 その後は君の意志を尊重する。」

「でも・・・!」

「――――――。」


ロックハートは睨んでは来ない。
ただ、やめろと目が言っている。


「・・・君のような人間に人殺しの手伝いなどさせられん。
 俺が頼むといった時は、敵の戦意を喪失させる時だ。」

「・・・・・・うん・・・分かったよ・・・
(キッド・・・速く来て・・・)」