ACT.79 大戦/異国の戦士


同刻<ソウジ>

「くそっ、こっち側にはトルレイトが主となって来ているのか!」

「隊長さん、下がって下さい!」


許可を取る間もなく、一気に滑り込む―――!


「ハッ!!!」


ド !! ゴォッ!!!


        『アグッ!』
『ごぁッ!!』        『ぐげぇっっ!!!』
 『ガハッ!!』   『な・・・何だ!?この女みたいなヤツは!』


「悪いけれど、名前を明かす訳にはいかないんだ。
 みんなに迷惑がかかるからね。」

瞬時に鞘に収めたまま薙ぎ倒す。

『ガッ・・・・・・ハァ・・・っ!』

トルレイト兵の全て倒れる。

「す・・・凄いな・・・
 君の的確な判断で大した怪我もせずに二小隊を・・・」

「そんな、大したことではありません。
 落ち着きさえすれば、みなさんも判断出来ます。
 敵軍の数は多いですが、地の利はこちらがよく知っています。
 それを考えれば、確実に有利に進められ」


       ドォンッッ!!


「――――――ッ・・・・・・」

それほど近くないが、爆破によって石が飛び散ってきた。
そして、煙が晴れていく・・・

『なーんだ、サイテーっ!
 もう1人の色男の方だと思ってたのにー。』

「・・・君は確か・・・・・・」


ロックハートが一蹴した閃迅組の紅一点。


『ユリ・イーチ。
 ローテルダム騎兵隊、特別編成隊“閃迅組”所属。』

「・・・という事は・・・・・・」

『シンちゃんも来てるよ。でも、こっち側に来て無いんだよね。
 アタシ的にはここに来た時は不満だったけど・・・
 あんたも相当いい感じだから、今は超ハイテンションって感じ。』

「・・・・・・
 (魔力の質が前とは違うな・・・やはり、小手調べだったか。)」

『あァ、心配しなくてもそっちのザコには手は出さないから。
 面白くないからね、単なる兵隊相手なんて。それに意味ないし。』

(意味が無い・・・?)

言葉の節々に何か、シンの様に含みがある。

「不肖ながらこれでも神刀流の免許皆伝だ。
 そんな僕に対して、そこまで言える君も中々な器だね。」

『自分の名前をそーいう風にワザと振りかざして、アタシの気を削ぐとか?』

「・・・・・・言ってみただけだよ。
 悪いけど、僕は余り女性とは戦いたくないから、」


チャキンッッ!


「瞬時に終わらせてもらう。
 そして君からは色々と聞かせてもらうよ。」

鞘から刀を抜き取るが、刃を返して構えている。

『・・・峰打ち・・・
 アンタさ、ちょっと嘗めすぎじゃない?マジ、ムカつくんだけど。』

双頭の薙刀を振り回す。

『ソーライト王国「双尖のユリ」って名前知らないのなら仕方ないけどね。』

「・・・ソーライト・・・・・・!」

『いっくよォッ!!!』

隙のないモーションによる素早い突貫!

「ッ!」


キィ・・・・・んっッッ!!


『ゅっ!やるっ!』

速い、が―――
動きを読みとり、薙刀の一撃を受け止め、押し上げる。

「・・・ロックハートから聞いたけれど、
 シンと同じで君も異国の戦士か・・・!!」

『詮索したってそれ以上の事は答えないよ。せい・・・ヤァッッ!!!』


ボッッ!!


「ッ・・・!!(魔力で瞬発力を一時的に上げたか!)」

掠めただけ・・・だがそれは、読みが遅れたという事実―――
間合いを取る為に後ろに下がる。

「・・・・・・・・・皆さんは、警戒を続けて下さい。
 この人は僕だけで相手出来ます。」

『そーいう事。
 っていうか、アンタらみたいなザコじゃ一生かかっても無理だよ。』

「・・・武の先輩に向かって言う言葉では無いな。」

『アタシはアンタほど、武士道だとかには傾倒していないだけ。』

「なるほど・・・・・・・・・なら、圧倒すれば勝ちだね。」

小太刀を納め、長刀を持ったまま右半身を半歩引く・・・
そして逆の左腕を前に出し、敵への照準に変える。

『・・・・・・神刀流・・・神羅刹刺閃・・・イキナリ出すんだ。
 結構アツイのが好きなんだね。じゃ、アタシもちょっとやろっかな。』


ザッッ・・・・・・


「・・・・・・あまり下手撃ちすると一生モノの傷を追うことになる。
 逃げることに集中する事を薦めるよ・・・」

『・・・さぁ、どうだか。
 とにかく、ドキドキしていい感じ。こういうの、嫌いじゃないんだ。』