ACT.84 大戦/闘争心の無い少年
天空から、争いの心を持つ者達全てに光が差し伸べられる。
その光に抱かれた者達に血を見ようとする者はおらず・・・・・・
敵兵は武器を捨て、跪く。その光に。
「これは・・・・・・」
「敵軍が・・・武器を・・・」
ガシャン・・・ッ。 ガランッ
「・・・神話ではオーロラの光はワルキューレ達の鎧に光が
反射して見られると言われている・・・この魔法もそれと同じ・・・
具現魔法化出来る二十二人のワルキューレを特殊な詠唱法で1つに集めて、
その光を放ったの・・・そしてこの効果は・・・」
「・・・戦闘意志の剥奪・・・
・・・なるほど・・・宣言通りに叶えたな。」
「うん・・・それから、私はただの学生よ。」
そう言いながらワルキューレの方を見上げる。
「ありがとう。これで多分、暫くは大丈夫。」
“無理はしないで・・・
同じ様に暫くは魔法を撃てないから・・・”
「うん。大丈夫。」
フゥ・・・・・・ッ。
「・・・す・・・・・・凄いぞ!」
「互いを傷つけ合う事なく、
この一戦を終わらせてしまうとは・・・!」
「そ、そんな・・・大したことはして無いです。」
(・・・疲れは見えるが、
立っていられる精神力・・・凄まじいな・・・)
『いえ・・・謙遜しすぎですよ、リノン・ミシュトさん。
あなたほどの魔術士がこれまで名を連ねなかった事の方が意外です。』
ザッ
「「「―――――――――?!」」」
ロックハートが一歩前に出、構える。
「・・・・・・シン・・・ヤマザキ・・・!」
『すっかり敵役に嵌っちゃってるみたいですね、僕ってば。』
ガ・・・・・・ キ ィィンッッ!!!
「―――――――――!」
ロックハートが一閃を受け止める―――
『驚きましたよ・・・
あんな魔法を使えるなんて・・・』
「そんな・・・
・・・どうして・・・刀を持って戦っているの・・・?!」
十中八九、リノンが敵と認識した
この周囲一体の者の闘争本能は消えたはず―――
『ああ・・・何の事はありませんよ・・・』
シンの一撃を弾き、吹き飛ばす。
『っと。あの魔法は、精神系。闘争本能に対するストッパーですよね?
ローテルダムの兵やバカな戦闘意欲の塊のトルレイト軍は止められても、
闘争本能の下で戦っていない僕には全く持って無意味ですよ。
例え味方をも対象としてもロックハートさんやソウジさんの様に
何らかの確固たる信念の下で戦っている人にもほぼ無効化です。
あるとすれば、良い方の効果でしょうね。精神的ゆとりが生まれたり・・・』
ザガッッッ!!!
『うわっ・・・!!』
ロックハートの反撃一閃―――
だが、軽々と避けきる。
『・・・危ないですねぇ・・・』
「よくもまぁ、そこまでベラベラと喋れるな・・・アホが。」
『あんまり頭に血を上らせるのはよくないですよ・・・?
クールな顔して激情家だ。』
更にもう1度閃撃を入れる!が、当然の如くシンもそれを躱す。
シンは避けつつ、逆胴を斬ろうとするが、失敗に終わる。
「・・・・・・・!!!」
『くっっ!!
(流石に速いですね・・・!)』
「このまま、斬り捨てる!デスサイズ。」
右手を握り締め、解き放つ。同時に風の刃が生まれる。
『(これは・・・・・・なるほどね。)
白刃流―――白牙帝釈刃(ハクガタイシャクジン)!』
ズ・・・パァンッッ!!!
『うわっっ!!ととっ!』
シンの魔力と刻印の魔力が激突し、互いに離れあう。
「・・・・・・
(魔力同士の衝突―――・・・以前なら、相殺ではなくこちらが危なかった。)」
『うーん・・・何だか、魔力の使い方が上手くなっている感じですね。
1、2度しか見たことはありませんけど。
例えば、暗殺事件の際のあの巨大な翼・・・とかね。』
「・・・・・・ほう・・・
・・・そうか・・・なら。」
ロックハートの周囲の風の流れが一変する。
「望み通りにこの翼で」
『受け止めよ、その衝撃。リキッド。』
「―――――――――!
あの魔法は・・・!ロックハート君っ!」
ギュオッッ!!!
「なっ・・・?!腕を・・・!?」
水・・・
いやゼリーに近いものがロックハートの手を封じる。
『・・・どうも可笑しいと思ったんですよ。
さっきの風の鎌だってそう・・・
魔法としての役割を果たしているのに、詠唱が無い・・・
その代わりに手を握り締め、放つという動作をしてみせた・・・
それが、あなたの不思議な魔法の発動条件ですよね。
ロックハート・クラウン・・・・・・さん?』
「ッ――――――。」