ACT.87 大戦/疑問
『まさか彼の子がその刀を振るとは思いませんでしたよ。』
「何だよ・・・
オメー、オヤジの事知ってんのか?」
『・・・バカなことを言わないでください・・・
スネイク・ベルビオスといえば、数々の戦乱を鎮めた大剣豪の1人・・・
世界三大剣豪に数えられる・・・・・・って・・・
どーしてそんな驚いた顔してるんです・・・?』
「俺はオヤジが何をやってたかなんて、殆ど知らねぇんだよ。」
―――――――――空気が止まる。
リノンだって少しは知っていたというのにこのバカはそう言ってのけた。
『あなた・・・僕はいいんですけど、他の誰かに聞かれたら真っ先に殺されますよ。
英雄であるということはその分、誰かの恨みだって背負ってるんですから。』
「だからなんだよ。
オヤジは死んでるから俺に吹っかけるってか?」
『ええ。』
「なら、俺は俺のやり方で倒す!
ただ、今はオヤジは関係ねぇ・・・」
チャッ!
「今はお前らを倒すだけだからな。」
『・・・・・・なるほど・・・これは更に判断のし甲斐があるというもの。
初撃を軽く往なせたのが、まぐれなのか実力なのかも見極めさせてもらいます。』
シンの重心が低くなり、腰の獲物の鞘を手に取る。
『・・・・・・じゃぁ・・・・・・行きますよ!』
ヴぉ・・・ッッ!!!
「「「は、速い!!」」」
キッドが正面に向かって走る。
「・・・・・・・・・」
(・・・?
何を見ている・・・キッド。)
『どうやら、殺気は分かっても眼は追いついていないようですね。』
「ッ!
後ろ・・・・・・!」
『違います。上です。白刃流・・・』
ガ ッ ぎッ!!!
「くっっ!!」
辛うじて受け止めていたが、
『(御見事・・・でもね・・・)ハッ!!』
更に上空から押し込まれる。
更にシンは左手に残している鞘で穿つ。
「がっっ!!」
ドシャッッ!
「ゴホッッ・・・・・・」
『白刃流、白牙双赦閃(ハクガソウシャセン)。
本当なら二本差しを使って殺っちゃうんですが、
流石に空中ではそこまでは出来なかったものですから。』
「く・・・・・・そっ・・・」
酷い頭痛―――
さっきの鞘の一撃がかなり効いている。
(・・・いや・・・・・・奴は少し焦っていたな。)
(え・・・・・・?)
「・・・・・・来いよ、ニコニコ野郎。」
『厭だなァ・・・
変なあだ名つけないで下さいよ。』
互いに合間を取り合う―――
「単なるケンカだったら別に構いやしねぇけど、
戦争でそんな風に笑いながら攻めやがって・・・人の命を嘗めんのも大概にしやがれ!」
『・・・・・・あぁ、なるほどね。真剣みが足りないと。
でも・・・キッドさん。真面目な顔して殺しあうのも結構酷いですよ。』
「話し変えてんじゃねぇよ。」
『まぁ、聞いてくださいよ。
戦争を酷いものだと感じるのは、駒同士が戦い合うからに他ならないとは思いませんか?
捨て駒といえる兵士が戦うから、無意味に民を傷付ける訳で。
僕もあんまり好きじゃないんですよ。だから、こうやってあなたの前に来た訳です。
上官である僕が、ケリをつければそれでいい訳でしょう?それに・・・』
ギ・・・ィンッッ!!
「――――――ッ!(なんて眼だ・・・ッ!)」
殺気が目に見て分かるほどに突き刺さった―――
更に抉るように刃を抜かれるような感覚―――
一瞬にして意識を奪われそうになったが、踏みとどまる。
『それに・・・正義の味方ぶったアナタに、
“戦いの何たるか”・・・なんて言われたくないですよ。』
「ぶってねぇよ!
大体、悪いのはテメェらだろうが!妙なこと言いやがって!」
『・・・はァ・・・分かってないなァ。
正義って言うモノはあらゆる人間にそれぞれ等しくあるんですよ。
あなたの行動理念がそれ。僕のも然り。ラゥムさんのもね。
あなたにとって、僕は悪の手先だろうけど、
ラゥム一派にしてみれば君達こそが悪なんですよ。』
「何が悪だよ!お前らが絶対に悪いだろーが!」
『だから、言ったでしょう?
ラウム一派は一派で自分たちが正義だと思っているんだから、って。』
相対的な正義と悪があっても絶対的な正義と悪は存在などしない―――
そう言いたいのだろうが、ロックハートが気にしたのはそれでは無い。
(・・・なぜ、自分たちとは言わず、一派と・・・
やはり、この男・・・一筋縄では行かんな・・・)
『ま・・・僕はあなた達と戦う。
アナタは僕を倒す。そのために戦う。
それだけで今は十分。つべこべ言わずに・・・殺りましょうよ。さっさと。』
「くっ・・・・・・!」
ザッ!!
『次は・・・完全に止められますかね・・・?』
「止めるんじゃねぇよ・・・・・・お前をブッ潰す。」