ACT.93 魔力の隙間


ミサト邸

「お疲れ様です、ソウジさん。」

「いやいや。ちょっと話を聞きに行っただけだしね。
 そういえば、キッドとメノウさんは?それにおばあちゃんも。」


ギャーーッ!!


「?!」

「外で思いっきりイヂめられてるんだョ。」

叫び声が人外のそれだったことにツッコミを入れたいソウジ。

「・・・・・・調子に乗って、
 おばあちゃんとメノウさんに魔力の扱いの伝授を頼んだと・・・?」

「そんな感じです・・・あのバカ、龍の炎の扱いはそれなりになってきてるみたいだけど、
 バリエーションが全然創れてないから、実体験して創ってやる!
 って、バカみたいに意気込んであのザマです。」

窓から見てみるが、また吹っ飛ばされている。
というか、2文でバカ2回は酷いと思う。

「ハハ・・・おばあちゃんはともかく、
 メノウさんはあんまり手加減が出来ない人だからな・・・」

「え゛・・・私の時は・・・」

「使ったと言っても重力魔法だけだろう?ああいうのは実は分かりやすいらしんだけど、
 生物が相手だと手加減出来ないんだ、あの人は。
 そう云うトコは僕より性質が悪い。」





「何さね、自分から申し込んでおいてこのザマは。」

「くっそ!オラ、来ォい!!」

無理矢理立ち上がり、もう一度構える。

「・・・メノウ。アンタだけで相手しな。
 アタシまで加わったら死んじゃいそうだしね。」

いや、変わるなら逆の方がいいと思いますけども。

「分かりましたわ。」


ザッ!


「キッド君。魔法はスポンジの様にスカスカなモノから、
 ダイヤモンドの様に殆ど隙間の無いモノまでありますわ。
 それの密度が魔法の耐久力を示す1つの指標。」

「う、うッス。」

いきなり撃たれると思っているのでかなり、逃げ腰。

「でも、如何なる魔法であっても100%の密度を持った魔法は存在しません。
 というより、100%にしては自分の身が滅ぶのです。」

「え・・・・・・?」

「鉄でモノを造る時に“あそび”というモノを作るのを知っていますか?」

「えーっと・・・完全にくっ付けないで、隙間を空けておくんだったっけ?
 暑い時に鉄が広がった時にヤバイから。」

「そう、魔法の密度を100%にしてはいけないのもそれと同じ理由ですわ。
 密度を100%にしてしまうと、魔力によって呪文で形成された空間・・・
 つまりこれが魔法の形を成す部分ですが、そこを魔力が動き回れなくなり、
 動こうとする力が溜まりに溜まって、発動と同時に暴発してしまうのです。」

「ふんふん。」

多分、分かってねェ。
要するに、理論はどうであれ隙間は必ずあるという事だ。

「少し前置きは長くなりましたが、
 キッド君・・・あなたには・・・・・・」


ギュゴッ!!  ボボボボボッ!!!



「・・・はい?」



ゴォォォ!!! オオォ!!   ガボ!!  ゴバガ!!
ォオォォオオオオッッ!!!!!


「・・・あのぅ・・・
 その、なんつーか、俺、そこまで求めてないですョ。」

余りに凄まじい魔力塊を前にしてコーデリア化してみるが、意味はないらしい。

「この密度99.9%の魔力玉を真っ二つに斬ってもらいますわ。」

「・・・・・・ッ・・・ああ、もう!!
 グダグダ考えんのなんて止めた!!一発で壊してやらァ!!」

「そう言うなら・・・」

空中にその魔力塊を浮かせる。

「言葉どおり、一撃で斬ってみて下さい。」

「行くぜ!!男なら、一撃必殺!!」

魔力塊目掛けて、刃を振り下ろす!

「喰らえ!!」


ザッ・・         ・・・・ガ。


「アレ・・・・・・?」

「どうしましたか?キッド君。」

「あのぅ・・・もしかして、土とかの属性だったりとか・・・?
 刃が全然刺さらないんスけど・・・」

「そうですか?無属性ですわよ?ウフフ。」

「・・・あ・・・」

何となく悟った。

「フフ・・・おかしいですわねぇ?
 属性で考慮すれば硬くも柔らかくも無い普通の硬度ですわよ?」

メノウ・クルストって人は下らない話、

「でも、どうしてそれが壊せないんでしょうか。
 もしかして、私、教え方間違っているのかしら。
 でも、これぐらいしか方法がありませんし、ダメなのは・・・」

守るより攻める人なんだって事を。
いや、むしろ責めるほうかも・・・どうでもいいや。

「・・・なんて独白してる場合かよ!
 だーっ!!もう一度ッ!次で絶対に壊す!!」


ザギッッ!!!


「・・・。
 ・・・な・・・何で刺さりすらしねぇんだよーっ!!」

(頭悪いねぇ、このボウヤは・・・何の為に魔力の隙間のコトを教えたのか、
 全くもって理解して無いじゃないか。
 まぁ、こういう事での閃きの悪さは、スネイクと同じさね。)

「こっんのっ!!小せぇクセに!!!」

(スネイクより数倍、時間がかかりそうだね・・・)