ACT.94 ふたりで修行


3時間後

「アンタ・・・まだかかってんの・・・?」

「キッド様、おそーい。」

「ここまで頭が悪いとは、僕も予想外だよ・・・」

脅威の失望3連撃。

「るせぇっ!!」

「っていうか、3時間斬りかかられて、
 未だ形が崩れないメノウさんの魔力生成の凄さの方が目立ってるし。」


ザッ!


「俺は、“頭で考えるより身体で感じろ!”なんだよ!」

自分でバカ認定。

「・・・・・・3時間やって、
 この程度も体現出来ないんじゃねぇ・・・」

「まぁまぁ。
 ただ、これ以上時間がかかるのも問題だし、1つだけ僕から。
 “身体で感じて”というのは大いに構わないし、いい事ではあるよ。
 けど、メノウさんが言った事の意味をちゃんと理解出来ないと、
 まぐれでしかその球体は壊せない。何の為に“隙間”のコトを教えてくれたのか。
 それをよく考えるべきだな。」

「・・・・・・うーん・・・・・・」


5分経過。


「・・・・・・っし!」

刃に僅かな魔力が注ぎ込まれる。

(答えは見つけられた様だな。)

「魔力の隙間・・・どんなに硬くても、密でも僅かな隙間がある・・・」

ザッ!!

「つまり、自分の魔力をクサビにして、そこから崩せってコトだ!!
 (ま、まぁ、隙間がドコにあるかわかんねーけど・・・多分この辺で!)」


ザッッ!!!!        ボンッ!!


「っしゃあっ!!」

おっそー、などとは決して言えないが、
心の中では連呼しているリノンとコーデリア。

「ともかく、お見事ですわ。これで魔力修行第一段階終了ですわね。
 次は訓練も兼ねて、第二段階はリノンちゃんにも協力して頂きますわ。」

「え゛ー?」

露骨に嫌がるが、
キッドはキッドで何でコイツと!などと言っている。

「2人でなければ出来ない事ですわ。
 30分休憩したら、第二段階を始めますわよ。」




間。




「それでは、第二段階の修行の説明ですわ。」


「うーッス。」「はぁい。」


「や・・・やる気無いですわね・・・」

あからさまに無い。

「露骨にそんな態度はお2人の為になりませんわよ?
 これは2人とも必要な事なのですから。」

「そりゃ、そう言われれば、そうかもしんないッスけど・・・」

「つべこべ言わずに2人ともちゃんとしな。メノウは怒らせると怖いよ。」

「そういう事なので、」


            ――――――ドッ!!


「ちゃんと素直に受けて下さいね。」

(あのぅ・・・露骨な態度は止めようっていってるのに・・・)

(魔力を放出するのはいかがなモンでしょうか?)

単なる放出じゃなく、放電的な音までなっている。
あぁ、やっぱり攻める側なんだと2人とも認識するが、それはどうでもいい。

「この第二段階には2つの目的がありますわ。
 1つは防御側が、向かってくる魔法の魔力の隙間を狙って的確に破壊する事。
 1つは攻撃側が、実戦形式で如何にして魔力の隙間を分散し、
 壊されずにより大きなダメージを与えるか。
 魔力の隙間は大きければ、それだけ隙間を狙われ易く、壊され易い。
 また、狙わなくても当てるだけで相殺も可能―――翻せば、
 小さく分散すれば、それだけ狙う手間がかかるから命中されされるという訳ですわ。」

「つーか、俺が防御なんスか。」

リノンに攻撃するのはイヤだが、されるのもそれはそれでイヤだ。

「キッドって龍の魔力は魔法として使ってないじゃない。
 魔力で創った魔法ではないモノだし。あの炎の大砲とか。」

「そういう事です。
 キッド君にはあくまで魔力の隙の突き方があるという事と、
 魔力攻撃を友好に扱う為の勉強をしてもらう為に。
 リノンさんは刻印の力という巨大な魔力に対しても、
 そう簡単には壊されない魔法生成術を身につけてもらう為に、
 お互いに協力し合ってもらう、と言う訳です。」


ぱんっ。


「ハイ。それでは、さっそくやってみましょう。まずは、リノンさん。
 魔力の扱いに慣れていないキッド君へのハンデの為に無属性通常魔法で、
 大きさは1m程度まででお願いしますわね。」

「はぁ・・・まぁ、分かりました。」


ォオ――――――ッ!


「それじゃ行くわよ、キッド。
 私・・・手は抜かない主義だから、そっちも本気で来なさいよ。」

「お前相手に手加減したら、こっち死ぬって、バカ。」

「けど、私の顔に傷一つじゃ許さないから。」

「って、おい!そりゃ・・・・・・ん?」

何か文法が違う気がする。

「本気で来なさいっていってるの。
 やるんなら、私が参ったっていうようなね。」

「(リノン・・・・・お前・・・)
 ・・・・・・上等!やってやるぜ!」