ACT.95 探し人
1時間後
「おや・・・
気になるから外に出てみたら・・・こりゃ凄いねぇ。」
「私も予想外ですわ。一方的になると思ってたんですが・・・」
パァンッッ!!
「シッ!! って・・・うおっ!!」
「二連撃だってあるのよ!」
「クッソ・・・!そのまま来い!」
「“水の洗礼、邪念を払え”!チェレステ!」
「うおおおっ!!」
硬く流動する水を放たれるが、
研ぎ澄まされた火炎の魔力で斬り裂く!
「あの水魔法を壊すのかい。」
そもそも、火にとって弱点である水を壊せるのは、
単純に刻印の魔力の質によるからだけではなく、
キッドが確実に隙を見つけられるようになっているという証拠。
「かといって、嬢ちゃんの方も負けて無いねぇ。」
「僕が見た限りでは五分五分かな。
(というか、無属性限定を忘れてるな、リノンさん。)」
「さっきなんか、キーちゃんが10個の塊を捌いたと思ったら、
リノンちゃんの大きい一撃が来て、壊そうとしたけど当たったんだョ。」
ザザッッ!!
「はっ・・・・・・はっ・・・・・・」
「・・・・・・へ・・・やるじゃねぇか・・・」
「アンタに言われたか無いわよ・・・
こっちの方が魔法に精通してるハズなんだから。
最低・・・学院トップの私がこんな風に手こずるなんて・・・」
「(大体いい感じですわね。)
それじゃ、一度休憩にしますわね。これを後3セット。
次は私が作った重力場の中でやってもらいますわ。」
「「・・・。 マジで・・・・・・?」」
で。夕刻。宅内。
「「――――――――――――。」」
「うわぁ・・・・・・死んじゃってるョ・・・」
もう、グダグダ。
「最初は1.2倍・・・最後には1.8倍でしたからね・・・
体重50kgで90kg近くまでなるんですから・・・
メノウさんも無理なことをする・・・」
「徐々に上げていったんですから、無理じゃありませんわよ。」
((や、凄く無理してますから。))
↑声に出ない。
「そういえば、今日は攻めて来なかったネ。」
「・・・向こうにも考えがありますからね・・・
トルレイトは本国に増援を頼んでいるのかもしれませんし・・・
明日には隊長達と接触出来ると思いますから、何の心配もなさらなくていいですよ。」
「心配なんかして無いョ。みんなが居るから。
それに、コーディも出来る事は頑張るから、一緒だョ。」
「姫・・・・・・」
絶対にこの少女の為にも、国の為にもラゥムを阻まなければならない。
コーデリアでなければ、ローテルダムは終わってしまう―――
今の言葉でキッドは本当に深くそう思った。
まぁ、その――――――なんつーか、半分聞こえてなかったケド、
主人公的にそうしておいた方が良いかな、という感じで。
「さーて、盛り上がった所で夕食にしようかねぇ。」
「・・・・・・ストップ。」
チャッ!
「・・・そこにさっきから居るのは誰だ?」
「「「!!」」」
とっさに構え、コーデリアを中心に陣形を整える。
「ハ・・・ッ。やっぱり、誰か居るみたいッスね。」
(って、アンタは絶対、気付いて無いでしょうに。)
「バレバレだぜ!10分前からそこに居ただろ、お前!出て来い!」
ビシィッ!と玄関口を指差す主人公。
「スマンなァ・・・俺、そっちやないんやけど。」
「へ・・・・・・?
(あれ・・・?この訛りとこの声は・・・)」
「どの程度の力なんか気になったから試させてもらったんやけど・・・
ほんの少し残念やな。まぁ、しゃーないか。」
へこむキッドをよそに、天井から忍の黒装束が降りてきた。
「お前、この手の事には鈍感やからなァ。」
「って・・・んなっ!?
お前・・・ブラッド!なんで・・・!」
「そらこっちのセリフや。一応は聞いとったけど・・・
まさか、ホンマにお前が居るとは思わんかったで、キッド。」
黒髪に鉢金、色黒な少年。着ているのは軽そうな忍装束だ。
「あら?ブラッド君とお知り合いなんですか?」
「知り合いも何も・・・私たち・・・」
「同級生なんスけど・・・」
王立ビサイド学院生徒登録番号7番ブラッド・クィテッド。
キッドやリノンとはクラスメイトである、らしい。
「ま、積もる話は後や、後。
おーい、入ってきて大丈夫やで。確認完了や。」
ガチャ・・・
「し、失礼します・・・」
「「「―――――――――!!!!」」」
その姿は―――
「こ、この人は・・・・・・」
自分たちも何度か間接的に見て知っている人だった―――。
「銀色の髪にライトグレーの瞳・・・それにこの顔・・・」
「・・・ソーライト王国の・・・・・・」
全員の視線がその少女に注がれる。
「はい・・・初めまして、
ソーライト王国王女“クリスティーナ・シラ・ソーライト”です。」
――――――――――――息を、飲んだ。
まさか、こんな所で、思わぬ形でその人を見つける事が出来て―――。
「この人が・・・・・・
ロックハートのずっと捜している人・・・・・・」