ACT.98 従姉弟


「しゃーないから、自己紹介。名前はブラッド・クィテッド。
 本属は天真忍軍。学校はそこの夫婦と同じビサイドや。」

「「誰が夫婦だ(よ)!!」

その辺が。

「4ヶ月前に、無理矢理に戻ったらこのコがおって、俺が世話役任せられたんや。」

「無理矢理に戻った・・・?」

「緘口令(かんこうれい)や、ソウジさん。
 この姫さんの事をたとえ里の者でも
 外に洩らさんようにする為に出向禁止と帰郷禁止がなされたんや。
 もちろん、それも悟られん様に上手く調整してたけど。」

「じゃあ、学校に来てなかったのは・・・」

「そーいう事や。
 スマンな・・・俺がおったところで変わったかは分からんけど。」

あの魔物の襲撃―――
学内でも飛びぬけて強かったブラッドが居れば恐らく変わっただろうが・・・

「いいっての。それじゃ、クリス姫が悪くなっちまうじゃねぇか。
 何とかなったから、気にすんなって。姫も。」

そう言うしかない。
いや、起きてしまった事なんだから―――誰かが居たら―――
なんてイフは言うべきじゃない。

「・・・ありがとうございます。」

「・・・・・・あれ・・・?クィテッドって・・・どこかで・・・」

「あぁ、そらリカードやろ?
 アイツとは従姉弟(イトコ)同士やからな。」



間。



「なぁっ!!!」「にぃぃぃっっ!?」

「僕はよく似ていると思うぞ・・・目の辺りとか。」
「そうですわね。」

アッサリと受け入れるソウジとメノウ。

「だって、コイツ色黒ぢゃん!」
「関係ないわ、アホ!」

確かに関係は無い。

「マユゲが太いョ!ありえないョ!」
「尚更関係ないわ、姫さん!」

それは人権侵害に近い。

「っていうか、リカードさん訛ってないし!」
「そら城に出向中やからや!」

大暴れ。
というか、この訛りを喋るリカードと言うのも見てみたくなってきた一向。

「リカードが天真の人間やっちゅうのは、隊長クラスしか知らんことなんやからな。
 他にバレん為に標準語や。」

「・・・・・・オマエさ・・・」

「絶対、標準語喋れない人だよね。クラスでも微妙に浮いてたし。」

浮いてた、で済んだらいいんだけど。

「放っとけ!」

「くすっ・・・・・・」

「「「「え・・・・・・・・・?」」」」

「あ・・・・・・その・・・ちょっと楽しくて・・・」

クリスティーナが笑った。

「良かったー・・・」

「ここに来てやっと柔らかい顔したッスね。」

「・・・・・・・・・ホント・・・ですか・・・?」

「笑ったんなら、もう心配しなくても大丈夫。」


ザッ!


「あのタイミングの悪いバカヤロウは直ぐに戻ってくる。
 それまでの間は俺達が守るぜ。んでちょっとしたら、あのバカと再会だ。」

「・・・・・・ハイ・・・!」

(・・・何よ・・・ここぞとばかりにカッコつけて・・・)

(((ニヤニヤ。)))

(な・・・何・・・?)

(いやいや・・・何でも無いよ、リノンさん。)




同刻 ローテルダム騎兵隊第一、第四大隊本陣
「本当にこんな時間から向かって何とかなるのか?」

「ああ。俺とリサさんでなら半分は確実に減らせる。クライセント隊長。」

「(とても17とは思えない自信だな・・・)しかしだな・・・」

「クライセント隊長達にはここからラゥム派の行動に睨みを利かせつつ、
 トルレイト軍の本体を叩いてもらわなければならん。イムラも同意見だ。
 あくまで今回は、姫を探す為ののプロセスを決定する為に来たまでの事。
 例の隔地の部隊の処理は俺達2人に任せてもらえば確実に遂行する。」

「・・・とはいえ、ここの指揮官はこの俺だ。だから、1つは聞いてもらうぞ。」

クライセントの聞いてほしい事が良く分からないが、
誰かを呼んでいるようだ。

「フ・・・全く、5分もこの僕を待たせるとはどういうつもりだい?」

「そう言うな。君の晴れ舞台が来たんだ。」

「この方は確か・・・クラッシュで有名な・・・」

(クロード・ネフェルテムか・・・)

鮮やかなイメージの中に只者では無い気配を感じ取る。
強い―――と。

「むっ・・・・・・!」


ザッ!


「これはこれは、お嬢さん・・・ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。
 僕はクロード・ネフェルテム。アナタのお名前は?」

跪き+手を取り+薔薇。要するにバカ。

「リ・・・リサ・クランバートですが・・・」

「リサさんですか!いい名前ですね。そして、お美しい!」

「ど・・・どうも・・・
 (テレビで見た事あるけど、生だと圧倒的にキャラが濃い。)」

濃いな。濃いっていうかクドイな。

「さて・・・緑髪の君・・・ヨロシク頼むよ。」

「・・・・・・お前が同行するという事か・・・」


ザァ・・・・・・   ッ!


「・・・間接的だが・・・会うのは2度目だね・・・」

「・・・ほう・・・競技場内でのあの面倒事を知っていたのか・・・」

互いに見ていた。

「フ・・・僕を嘗めないでくれたまえ。ロックハート・クラウン。
 リサさんも同時に動いていた事は既に知っているよ。
 姫を招待したのは僕だから気にかけていたしね。」

「ほう・・・・・・蹴撃の貴公子の名は伊達では無いらしいな。」

「当然さ。僕はアスリートであると同時にエンターテイナー。
 会場の全てを把握するのは当たり前の事だからね。
 それに、僕の脚はローテルダム最強だ。足手まといにはならないさ。」

「ああ、こちらも宜しく頼む。」