前編 第3話『偽名<コード>』
数時間後、被害者に直接触れたコナン、灰原と教師陣を残しその他は帰宅となった。
少年探偵団は残りたがったが、相手が銃を持っている事もあり、何とか折れさせた。
米花署
「え・・・?薬物反応・・・?」
少し意外だった。
「ああ。本当に微量だけど、陽性反応が出たんだよ。」
先ほどの警部補の“相手”が報告しに来た。
「もしかして・・・薬物を持ってたから調べたの?」
「あぁ。僕らも驚いてね・・・それで調べてみたら、その結果という訳だよ。」
相変わらずの頼りない様子で質問には答えてくれる。
「あの・・・刑事さん。我々としてはこの2人も早く返してあげたいのですが・・・」
担任の小林先生だ。
「協力はしたいのですが、やはり事が事ですので・・・」
―――弱ったな・・・と思う。
(・・・・・・おい・・・灰原。)
思っている事を手短に話してみる。
(・・・・・・フサエブランドのバッグ・・・でどう?モチロン、新作ね。)
(またかよ?!)
(あら・・・・・・天体観測の時の分も残っているけど・・・?)
貢がされかけているのは気のせいでしょうか。
(頼むよ、灰原。)
(――――――。)
この眼をされると少し断れない気になる・・・多少厭だ。
けれど、その裏で少し嬉しい気にもなる。
その―――数分後――――――
「あ・・・失礼。」
携帯が鳴ったので電話に出る。
「お久しぶりです、高木刑事。工藤です。」
「ブッ・・・!く、工藤君・・・!?な、何で僕の携帯の番号を・・・」
「事件の話は訊いたわ・・・訊きました。」
・・・“わ”・・・?
「き、訊いたって・・・(何か、前と口調が違うな・・・)」
「江戸・・・コナン君からですよ。事件直後に連絡が入って・・・
少しばかり組み立ててみましたが、やはり現場を見ている2人の方が詳しいので、
署の方に残して頂ける様、先生方に頼んで頂けませんか?」
「と・・・いう訳なんですが・・・」
「責任は僕が全て取りますし、保護者とも面識があるので・・・」
工藤新一の名は良く知っているが、やはり・・・と言うのが教師陣の反応だった。
とはいえ、捜査に協力しないわけにも行かないので“とりあえず”の形で残る事が出来た。
もちろん、工藤新一のコトは「捜査妨害」に当たるとして口外しない様に念を押しておいた。
数十分後
「悪いな、灰原・・・」
今は休憩と言う事で二人だけである。
「・・・感謝しなさいよ。でもどうして、私も残すようにしたの・・・?
確かに私も被害者に触れはしたけれど・・・・・・」
「・・・・・・オメー・・・やっぱちょっと勘付いてんじゃねぇのか・・・?」
僅かに眼を逸らす。
「・・・何を・・・かしら・・・?」
鈍りかけていた感覚。
「・・・あの手際の良さ・・・推論だけど効き目がある工作・・・何より黒の」
「それだけで・・・彼らだっていうの・・・?」
確かにそれは言えている。
ベルモットという組織の女と接触した時から、その手の懐疑心が一層強くなった。
過敏に過剰に反応しているのは自分でも理解しているつもりだ。
「俺があの薬を飲まされる前、ウォッカがどっかの偉いサンか何かを脅してて数億獲ってたんだよ。
麻薬の売買くらいやっててもおかしくねぇんじゃねぇか?金の収集目的に。」
「・・・売買・・・って・・・」
「あぁ・・・・・・恐らく被害者は麻薬の売人だ・・・末端のな・・・
“裏切られた”は売買に関して安泰な状況だったにも関わらず・・・ってコトだろうな。
失敗したんだったら、そんな言葉は出ねぇよ。」
「・・・・・・相変わらずの推理のスピードね・・・」
「んなコトねぇよ・・・まだ実像がハッキリしてねェから、これくらいしか分からねぇ。」
“で・・・” そう言って話を無理矢理、戻す。
「お前・・・知ってるんじゃねぇか・・・?こういう手口でやってる奴の事を・・・」
「・・・・・・・・・えぇ・・・」
「ヤバい奴だから、工藤新一の役もやってくれた。」
「・・・・・・・・・当たりよ・・・多分、そうだと思うわ・・・」
そう言って少しの沈黙が生まれる。
―――破ったのも灰原・・・
「直接の面識はないわ。ただ、薬物売買で資金を得ている組織員の1人の名は知っている・・・
一部では・・・ジンよりも危険なメンバーだと言われてるわ・・・」
「・・・・・・ジンより・・・?・・・暗号名<コードネーム>はなんだよ・・・」
「・・・・・・・・・」
再び、しかし少しばかりの沈黙。
「・・・・・・コードネーム:スピリタス。」
空気が止まる・・・・・・
「それが・・・薬物売買班のトップの名前よ・・・」